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平成16年仙審第39号
件名

漁船美穂丸定置網損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成16年10月14日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(勝又三郎)

理事官
西山烝一

受審人
A 職名:美穂丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
美穂丸・・・プロペラに曲損
定置網・・・手網及び同網固定用索に損傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件定置網損傷は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年1月18日17時30分
 秋田県塩瀬埼南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船美穂丸
総トン数 3.7トン
登録長 10.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 116キロワット

3 事実の経過
 美穂丸は、雑漁業に従事するFRP製小型兼用船で、昭和62年7月二級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、知人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.8ートルの喫水をもって、平成16年1月18日09時00分秋田船川港秋田区にある旧雄物川沿いの係留地を発し、10時30分男鹿半島塩瀬埼南西方沖合の釣場に至ってめばる釣りを行い、午後同埼陸岸付近に移動してやりいか釣りを続け、17時10分ごろ釣りを終え、漁獲物と甲板上の整理を行ったのち帰航することにした。
 ところで、秋田船川港西方には8箇所の定置漁業区域が設定され、周年のたい、いか定置網漁業が行われ、その一区域である塩瀬埼南東方1,400メートルのところに、南北方向に設けられた定置網には、多数のボンデンが取付けられていたうえ、その南端数メートル沖合に高さ2メートル、毎4秒に黄色1閃光を発する小型灯浮標が設置されていた。
 また、A受審人は、建設業を行う傍ら父親とともに漁業を営み、夜間のめばる釣りによく出掛けており、知人と共に今回の魚釣りとなったもので、塩瀬埼南東方沖合の定置網の状態についてもよく知っていて、GPSプロッターに定置漁業区域や秋田船川港秋田区と釣場間の航跡とを入力させていたが、他の多数の釣場も入力していたことから煩雑になり、同プロッターの記憶状態を整理したところ、航跡をも消去してしまったうえ、前示漁業区域も判別できなくなった。
 A受審人は、GPSプロッターを使用できない状況にあったものの、平素、塩瀬埼沖合の定置網の南端を替わした付近で釣りを行い、その釣場から秋田船川港秋田区にある東北電力秋田火力発電所の灯火を取付けた顕著な煙突を目標にして帰航していたが、今回の釣場が陸岸寄りであったことを失念し、付近には灯台が設置され、定置網南端付近に小型灯浮標が設けられていたので、それらを活用するなどして船位の確認を十分に行うことなく、いつもの釣場付近まで移動せず、17時25分発進した。
 こうして、17時26分A受審人は、塩瀬埼灯台から219度(真方位、以下同じ。)300メートルの地点で、針路を124度に定め、機関回転数毎分1,000の前進にかけ、7.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)として手動操舵で進行した。
 17時29分少し前A受審人は、塩瀬埼灯台から148度730メートルの地点に達したとき、船首方400メートルのところに定置網が存在していたが、依然、陸岸寄りの釣場から発進したことを失念し、沖合のいつもの釣場付近に向かわないまま続航した。
 17時29分半A受審人は、定置網南端を替わしたものと思い込み、機関回転数を毎分2,200に上げ、速力を15.0ノットに増速して向首進行中、17時30分塩瀬埼灯台から139度1,110メートルの同網中央付近に、美穂丸は、原針路、原速力のまま乗り入れた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期で、日没時刻は16時43分であった。
 その結果、美穂丸は、プロペラに曲損を、定置網は、手網及び同網固定用索に損傷を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件定置網損傷は、夜間、釣りを終え、塩瀬埼南方の陸岸付近から秋田船川港に向けて帰航するにあたり、釣場を発進する際、船位の確認が不十分で、同埼南東方沖合に南北方向に設けられた定置網に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、釣りを終え、塩瀬埼南方の陸岸付近から秋田船川港に向けて帰航するにあたり、釣場を発進する場合、釣場付近には灯台が設置されていたうえ、定置網南端付近に小型灯浮標が設けられていたのであるから、同埼南東方に設けられた定置網に接近しないよう、灯台と同灯浮標の灯火を活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、今回の釣場が陸岸寄りであったことを失念し、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、いつもの釣場付近まで移動せずに発進し、定置網に向首進行して乗り入れ、美穂丸のプロペラに曲損を、定置網の手網及び同網固定用索に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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