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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年広審第66号
件名

貨物船神栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年9月17日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(米原健一)

理事官
村松雅史

損害
球状船首部及び船体前部の船底外板に凹損や擦過傷などの損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年3月8日23時40分
 三原瀬戸
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船神栄丸
総トン数 199トン
登録長 55.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 551キロワット

3 事実の経過
 神栄丸は、主として広島県広島港から兵庫県姫路港や同県網干港へのスクラップ輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、船長A(五級海技士(航海)(旧就業範囲)免許受有、平成16年5月死亡)ほか1人が乗り組み、スクラップ650トンを積み、船首2.6メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成16年3月8日11時50分広島港を発し、13時40分広島県倉橋島奥ノ内港の桟橋に一時着けたのち、20時50分同港を発進して姫路港に向かった。
 ところで、A船長は、内航貨物船の航海士や船長の経験を有し、同年1月神栄丸に初めて乗り組んで船主の機関長と2人で運航にあたっていたところ、2週間ばかり前に風邪を引いたので医者からもらった薬と市販の薬とを服用していたものの風邪が治らず、体調がすぐれなかったうえ、数日間航海や荷役作業が続いて十分に休息がとれなかったので疲労が蓄積した状態で、当日も奥ノ内港に着桟中医者の診察を受け、20時ごろ夕食をとったのち風邪薬を服用していた。
 A船長は、21時00分単独4時間の船橋当直に就き、扉や窓を閉めて暖房を効かせた操舵室で、同室中央に設置した床面からの高さ1メートルの操舵スタンドの右舷後方に立って見張りにあたり、同時30分ごろ猫瀬戸を通航したとき、軽い眠気を感じたので同室左舷側の扉を開けて外気を入れたり、時折ウイングに出るなどしながら当直を続けて柳ノ瀬戸及び唐島瀬戸を東行した。
 23時15分半少し前A船長は、忠海港東防波堤灯台から212度(真方位、以下同じ。)1,500メートルの地点に達したとき、針路を広島県高根島西岸に向く090度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて9.5ノットの対地速力で、同西岸に1.3海里まで接近したころ青木瀬戸に向けて転針するつもりで三原瀬戸を進行した。
 定針して間もなくA船長は、強い眠気を催し、そのまま当直を続けると居眠りに陥るおそれがあったが、休息中の機関長を起こして当直を交替するなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく、操舵スタンドの右舷後方に立ったまま、同スタンドにひじを付いてもたれた姿勢で見張りを続けるうち、いつしか居眠りに陥った。
 こうしてA船長は、23時32分少し前転針予定地点に至ったものの、居眠りに陥っていたのでこのことに気付かず、高根島に向首したまま続航し、23時40分高根島灯台から225度1,500メートルの地点において、神栄丸は、原針路原速力のまま、高根島西岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は上げ潮の末期にあたり、視界は良好で、付近には東北東方に流れる弱い潮流があった。
 乗揚の結果、球状船首部及び船体前部の船底外板に凹損や擦過傷などを生じたが、翌朝来援したサルベージ会社の引船によって引き下ろされ、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、三原瀬戸において、居眠り運航の防止措置が不十分で、広島県高根島西岸に向首進行したことによって発生したものである。





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