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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年門審第58号
件名

漁船第八和栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年8月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(清重隆彦)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:第八和栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部に破口及びプロペラ軸曲損など

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年10月9日15時20分
 山口県萩市尾島南岸
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第八和栄丸
総トン数 19.60トン
全長 22.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 160

3 事実の経過
 第八和栄丸(以下「和栄丸」という。)は、いか一本つり漁に従事する、FRP製漁船で、昭和51年5月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成15年10月9日14時00分山口県仙崎港を発し、同県見島北北東沖合の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、平素、14時ごろ出港して夕方漁場に着き、日没時から操業を始め、翌日の明け方操業を終えて漁場を発し、09時ごろ帰港して水揚げを行い、次の出漁準備を整えて休息をとったのち、再び出漁していたので、港では約2時間しか休息をとることができなかったものの、操業中、甲板員と交代で数時間の休息をとって睡眠不足とならないようにしていた。しかし、このところ時化の日がなかったことから、20日ばかり連続して出漁しており、同受審人は多少疲労気味となっていた。
 A受審人は、発航後、単独で船橋当直に就き、舵と機関を適宜使用して防波堤外に出た。そして、8.0ノットの対地速力として帆止ノ瀬戸に向け、舵輪後方の椅子に腰を掛けて自動操舵により進行し、14時33分穴ノ口灯台から238度(真方位、以下同じ。)300メートルの地点で、針路を039度に定め、椅子に腰を掛けたまま、同じ速力で続航した。
 14時52分A受審人は、相島港D防波堤灯台から165度3.1海里の地点に達したとき、天候が良く海上も穏やかで周囲に他船も見えず、連日の操業の疲れから眠気を覚えたが、転針地点が近いので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって窓を開け外気に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 和栄丸は、A受審人がいつしか居眠りに陥り、15時04分転針地点に達したものの、転針が行われないまま、同じ針路及び速力で進行し、15時20分相島港D防波堤灯台から092度3.1海里の尾島南岸に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船首部に破口及びプロペラ軸曲損などを生じたが、のちいずれも修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、山口県見島北北東沖合の漁場に向かう際、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県尾島に向けて進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直にあたり、見島北北東沖合の漁場に向け航行中、連日の操業による疲れから眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう、立ち上がって窓を開け外気に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、転針地点が近いので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、予定の転針を行わないまま尾島に向かって進行して乗揚を招き、船首部に破口及びプロペラ軸曲損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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