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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年函審第36号
件名

漁船第五十七三喜丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年7月21日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第五十七三喜丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
球状船首欠損及び船底外板擦過傷等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年8月7日22時45分
 北海道落石漁港東方
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十七三喜丸
総トン数 4.9トン
全長 15.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 422キロワット

3 事実の経過
 第五十七三喜丸(以下「三喜丸」という。)は、さんま流し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人(昭和50年1月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成15年8月6日23時00分北海道落石漁港を発し、翌7日01時30分同漁港南方40海里の漁場に至って操業を始め、さんま600キログラムを獲たところでこれを打ち切り、20時40分漁場を発進して同漁港に向け帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、7月上旬からさんま漁を行っていたが、8月に入って盛漁期となり、漁場との往復の航海当直、漁場での魚群探索、投網後の網の監視及び揚網後の整理作業等に就き出漁中はほとんど休息がとれず、夜間に帰港して1時間ばかり休息をとるだけで出漁する日が5日ほど続き、睡眠不足のため疲労が蓄積した状態であった。
 A受審人は、単独の航海当直に当たり、操舵室の暖房を効かせ立って見張りを行って北上し、22時40分半わずか前落石岬灯台から085.5度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点に達したとき、針路を落石漁港東方に向く315度に定め、機関を全速力前進にかけて20.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 定針したころA受審人は、港内の明かりが見える安堵感もあって蓄積した疲労から眠気を催したが、間もなく入港するからそれまで眠気を我慢できるものと思い、休息中の甲板員を呼んで2人で当直を行うなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、操舵室右舷側の壁に寄りかかって当直を続けるうち、いつしか居眠りに陥った。
 22時43分わずか前A受審人は、落石岬灯台から055度1.2海里の地点に至り、港口に向ける予定転針地点に達したが、居眠りに陥ってこれに気付かないまま続航し、22時45分三喜丸は、落石岬灯台から024度1.3海里の洗岩に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、三喜丸は、球状船首欠損及び船底外板擦過傷等を生じたが、自力で離礁し、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、漁場から北海道落石漁港に向け帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同漁港東方の洗岩に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で航海当直に就いて漁場から北海道落石漁港に向け自動操舵により帰航中、眠気を催した場合、連日出漁して疲労が蓄積していたから、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を呼んで2人で当直を行うなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、間もなく入港するからそれまで眠気を我慢できるものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、同漁港東方の洗岩に向首したまま進行して乗揚を招き、三喜丸に球状船首欠損及び船底外板擦過傷等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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