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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年那審第66号
件名

遊漁船まさ丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年6月8日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(小須田 敏)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:まさ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
船尾部船底外板に破口を生じて機関室に浸水、その後沈没

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月31日10時00分
 沖縄県宮古島世渡埼沖
 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船まさ丸
登録長 5.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 13キロワット

3 事実の経過
 まさ丸は、船体中央部に操舵室を設けたFRP製遊漁船で、昭和57年6月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成15年7月31日09時00分沖縄県宮古島荷川取漁港を発し、同県池間島の北方にある八重干瀬付近の釣り場に向かった。
 ところで、A受審人は、昭和37年頃かつお漁船に乗り組み、その後昭和58年から総トン数19トンのまぐろ漁船の船主兼船長として運航に携わり、平成12年から同14年5月まで引船の船長職を務めていた。一方、同受審人は、平成13年夏に購入したまさ丸を前示船舶所有者名で登録し、休暇時などにレジャーとして使用していたが、引船の船長職を辞したのち、水揚げの実績を作って漁業協同組合に加入するつもりで、八重干瀬及び伊良部島沖などの釣り場において釣りを繰り返していた。
 A受審人は、折から夜更かしをして睡眠時間が約5時間であったため、やや睡眠不足状態のまま、いつものように操舵室内に置いたいすに腰をかけ、舵柄を握りながら宮古島西岸に沿って北上したのち、09時48分同島北西端の西平安名岬沖にあたる、池間港第2防波堤灯台(以下「第2防波堤灯台」という。)から154度(真方位、以下同じ。)890メートルの地点で、針路を宮古島北端の世渡埼と池間島との間に架けられた池間大橋の中央部付近に向かう033度に定め、スロットルレバーを調整して5.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、その後やや睡眠不足状態と穏やかな天候であったことなどから、眠気を感じるようになったが、間もなく世渡埼及び池間島から張り出した両裾礁域の間にある長さ約200メートル可航幅約50メートルの狭い水路(以下「池間島東口水路」という。)の南口に差し掛かることから、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、立ち上がって操船にあたるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく続航した。
 こうして、A受審人は、09時54分半池間大橋中央部の下付近にあたる、第2防波堤灯台から085度970メートルの地点で、池間島東口水路の北口付近に設けられた池間島東口水路灯標に向首し、同水路を航行する026度に転じたとき、前路に他船を認めなかったことから、気が緩み、間もなく居眠りに陥った。
 このため、A受審人は、その後右舵を少しとったことも、池間島東口水路を航行する針路から右偏して世渡埼沖の裾礁域に向かう態勢となったことにも気付かずに進行し、まさ丸は、10時00分第2防波堤灯台から065度1,730メートルの地点において、船首が060度に向いたとき、原速力のまま、同裾礁域の外縁部に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船尾部船底外板に破口を生じた。
 A受審人は、乗揚の衝撃で目覚め、直ちに機関を停止して船体の損傷状況などを調べたところ、機関室に浸水を認めたものの、大きな損傷がないように見えたことから、高潮時を待って離礁することとし、それまでの間自宅で待機するつもりで、通りかかった僚船に依頼して最寄りの池間漁港に上がった。
 一方、まさ丸は、その後波浪による上下動を繰り返すうちに自然離礁し、水船状態となって世渡埼の北東方沖を漂流しているところを発見され、池間漁港に向けて曳航されたものの、その途中、浮力を喪失して沈没した。 

(原因)
 本件乗揚は、沖縄県宮古島北端の世渡埼沖を釣り場に向けて航行中、眠気を感じた際、居眠り運航の防止措置が不十分で、狭い水路を航行する針路から偏し、同埼沖の裾礁域に向かう態勢となって進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県宮古島北端の世渡埼沖を釣り場に向けて航行中、やや睡眠不足状態と穏やかな天候であったことなどから、眠気を感じた場合、立ち上がって操船にあたるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、間もなく狭い池間島東口水路の南口に差し掛かることから、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、同水路を航行する針路に転じたとき、前路に他船を認めなかったため、気が緩んで居眠りに陥り、その後右舵を少しとったことも、同針路から右偏して世渡埼沖の裾礁域に向かう態勢となったことにも気付かないまま進行し、同裾礁域外縁部への乗揚を招き、船尾部船底外板に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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