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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成16年神審第9号
件名

貨物船白陽丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年4月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:白陽丸船長 海技免許:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
指定海難関係人
B 職名:白陽丸甲板員: 

損害
船首船底に破口を伴う凹損を生じ、バラストタンクに浸水

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年6月25日04時20分
 鳴門海峡
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船白陽丸
総トン数 199トン
全長 58.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 白陽丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、船首2.30メートル船尾3.16メートルの喫水をもって、セメント材料のマグネシアクリンカー530トンを積載し、平成15年6月24日10時30分山口県宇部港を発し、三重県四日市港に向かった。
 ところで、A受審人は、通常、娘婿であるB指定海難関係人と妻である機関長の3人で乗り組み、船橋当直には3人がそれぞれ単独で就いていたが、その時間帯については航海毎にA受審人が決定していた。今回、宇部港にて機関長が休暇を取って下船したので、その交代要員として臨時の機関員を宇部港から乗船させたが、A受審人は、機関員の船橋当直の能力が分からなかったので、機関員に船橋当直を任せることなく、自身とB指定海難関係人の単独2交代制で行うことにした。
 また、A受審人は、日頃から乗組員に眠気や不安を感じたら自分を起こすよう言っており、航海中に寝台で横になるときにはいつでも対応できるよう作業服を着たままであった。
 A受審人は、出港操船に引き続いて船橋当直に就き、瀬戸内海を東行して備後灘に入り、22時ごろ岡山県笠岡市六島(むしま)の西方約6海里のところで、次直のB指定海難関係人に対し、鳴門海峡に06時ごろ到着するよう速力を調整することと鳴門海峡に接近したら自分を起こすことを指示して船橋当直を引き継ぎ、自室で作業服を着たまま休息した。
 船橋当直に就いたB指定海難関係人は、東行を続け、備讃瀬戸を通過し、翌25日02時35分地蔵埼灯台から123度(真方位、以下同じ。)6.4海里の地点に達したとき、針路を120度に定め、機関を半速力前進にかけ8.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)とし、徳島県鳴門市島田島の北西方沖合で漂泊して潮待ちをする予定で進行した。
 定針したころB指定海難関係人は、操舵機後方の背もたれと肘掛けの付いた椅子に腰掛けて操船に当たっていたが、備讃瀬戸から広い海域に出たので緊張が解けて眠気を覚えたものの、宇部港出港前には十分休息が取れていたので、まさか居眠りをすることはないものと思い、椅子から降りて体を動かすなど居眠り運航の防止措置をとることなく、続航した。
 03時ごろB指定海難関係人は、GPSプロッターで船位を確認したが、その直後、椅子に腰掛けたまま居眠りにおちいった。
 こうして、B指定海難関係人は、04時10分阿波瀬戸港北泊外防波堤灯台から304度1.2海里の漂泊予定地点に達したものの、居眠りにおちいっていてこのことに気付かず、機関を停止して行きあしを止めることなく、島田島に向首したまま進行し、白陽丸は、04時20分同灯台から068度350メートルの地点において、島田島北西岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力1の北北西の風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 A受審人は、自室で休息中のところ、乗揚の衝撃を感じ、急ぎ昇橋して事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、船首船底に破口を伴う凹損を生じ、バラストタンクに浸水したが、その後サルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、備讃瀬戸から鳴門海峡に向かう際、居眠り運航の防止措置が不十分で、予定の漂泊が行われず、島田島北西岸に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人等の所為)
 B指定海難関係人は、夜間、備讃瀬戸から鳴門海峡に向け東行中、眠気を覚えた際、椅子から降りて体を動かすなど居眠り運航の防止措置をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては、勧告するまでもない。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。





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