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平成15年長審第59号
件名

漁船第八奈良尾丸属具損傷事件

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成16年3月16日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(寺戸和夫、原 清澄、清重隆彦)

理事官
花原敏朗

受審人
A 職名:第八奈良尾丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船上クレーンのコラムが折損、ブーム起伏装置用油圧シリンダのロッドが曲損

原因
網の洗浄作業中、風が強まった際、同作業を中止しなかったこと

主文

 本件属具損傷は、網の洗浄作業中、風が更に強まった際、同作業を速やかに中止しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年6月12日11時10分
 長崎県五島列島奈良尾港
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第八奈良尾丸
総トン数 19トン
登録長 21.28メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第八奈良尾丸(以下「奈良尾丸」という。)は、長崎県奈良尾港において、定置網漁に従事するFRP製漁船で、奈良尾港小奈良尾北防波堤灯台から180度(真方位、以下同じ。)950メートルにある同港内の係留地から113度1,050メートルの地点に設けられた南北500メートル東西50ないし60メートルの定置網漁場での操業や、同灯台から305度270メートルの地点にある岸壁(以下「作業岸壁」という。)での操業後の網の洗浄作業などを行うことに使用されていた。
 奈良尾丸は、船尾寄りにある操舵室直前の甲板上に、B社製のUB334型と称する舶用の船上クレーン(以下「クレーン」という。)を1基備え、同クレーンのブーム先端に網捌き機を取り付け、洗浄作業の必要に応じて同機を運転していた。
 クレーンは、取付台とコラムを合わせた高さが約1.5メートルで、平成13年に新替えされ、その吊上げ荷重は950キログラムで、容量が5.2トンメートルあった。また、コラム上端から伸びるブームが、長さ3.41メートルないし9.97メートルの4段階に調整できるもので、更にコラム旋回及びブーム起伏の両装置を備え、これらは全て油圧駆動で作動するものであった。
 奈良尾丸は、一級小型船舶操縦士免許(昭和49年10月取得)を有するA受審人ほか14人が乗り組み、漁場での揚網を目的として、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水で、平成15年6月12日07時30分係留地を発し、同時40分漁場に着いたものの、当日未明から強まりつつあった風の影響で波が高く、揚網ができない状況であったことから、同時50分操業を断念して漁場を発し、08時00分係留地に戻った。
 A受審人は、作業岸壁に置かれた網が、1週間前に漁場で入れ替えて汚れたままとなっていたことから同網を洗浄することとし、網捌き機を積み込んで、08時05分係留地を発し、同時20分作業岸壁に至り、同岸壁を甲板上2.5メートルの高さに見ながら、左舷側を接舷して船首を104度に向け、ブームを左舷側に振って3段階繰り出し、その長さを7.79メートル起伏角度を45度としたのち、陸上のポンプで吸引加圧した海水を、クレーンで吊り上げた網に噴射し、網を甲板上に取り込みながら洗浄を続け、09時50分洗浄を終えた最初の網を乾燥させるため、200メートルばかり東隣にある防波堤で同網を広げて干し、10時05分作業岸壁に戻って2枚目の網の洗浄にとりかかった。
 このころ、未明から強く吹いていた風が更に強くなって船体が激しく動揺し始め、奈良尾丸は、船首及び船尾のもやい索が強く張って左舷側が岸壁と絶えず衝突するようになり、甲板上においては、作業の困難さが増すとともに不測の事態が生じるおそれが高くなる状況となったが、A受審人は、網の洗浄を何とか終えておきたいと思い、速やかに洗浄作業を中止することなく、同作業を続行した。
 奈良尾丸は、強風で船体が激しく動揺する状況のもと、網の洗浄作業を続け、網を吊り上げたクレーンが、網の両端にあたる岸壁上及び甲板上の網で過重な横方向への引張り応力を繰り返し受け、11時10分網の洗浄を3分の2ばかり終えたとき、奈良尾港小奈良尾北防波堤灯台から305度270メートルの前示作業岸壁において、突然クレーンのコラムが左舷側に折れ曲がり、同時にブーム起伏装置用油圧シリンダのロッドもシリンダ上端出口付近で曲損した。
 当時、天候は曇で風力4の南風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、港内には波高1メートルのうねりがあった。
 奈良尾丸は、曲損した主要部品及び関連する各部品を新替えしてクレーンの修理を終えた。 

(原因)
 本件属具損傷は、岸壁に接岸し、船上のクレーンで吊り上げた網の洗浄作業中、風が更に強まった際、速やかに作業を中止せず、クレーンのブームが、甲板上と岸壁上の両方の網から、過重な横方向への引張り応力を繰り返し受けたことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、強風のもと、岸壁に接舷して船上クレーンのブームを伸長し、ブームで定置網漁に使用された網を吊り上げて網の洗浄作業中、作業開始時から吹いていた風が更に強まってきた場合、ブームを格納するなどして、速やかに作業を中止すべき注意義務があった。ところが、同人は、何とか洗浄作業を終えておきたいと思い、速やかに同作業を中止しなかった職務上の過失により、ブームを伸長したまま網の洗浄作業を続け、網を吊り上げたブームが、網の両端にあたる甲板上及び岸壁上の網で過重な横方向への引張り応力を繰り返し受ける事態を招き、クレーンのコラム上部が曲損すると同時に、ブーム起伏装置用油圧シリンダのロッドも曲損するに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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