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平成15年長審第60号
件名

漁船伸栄丸運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成16年2月10日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(寺戸和夫)

理事官
花原敏朗

受審人
A 職名:伸栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
運航不能

原因
主機燃料油供給系統の整備不十分

裁決主文

 本件運航阻害は、主機の燃料油供給系統にある油水分離器の整備が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月13日08時20分
 佐賀県加唐島北方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船伸栄丸
総トン数 7.9トン
全長 17.05メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 301キロワット
回転数 毎分2,000

3 事実の経過
 伸栄丸は、昭和60年に進水した一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、主機としてB社製の6KH-ST型と称するディーゼル機関を備え、機関室内の前後左右に計4個の燃料油タンクを設け、同タンクの全容量は1,500リットルであった。
 ところで、伸栄丸は、一級小型船舶操縦士免許(平成元年9月取得)を有するA受審人が、平成15年6月に船体を中古で購入したもので、このとき同人は、知人から別途中古購入した前示の機関を船体が保管されている造船所まで自ら搬送し、同機関を主機として据え付けるよう造船所に依頼した。
 主機の燃料油系統は、燃料油タンクからの燃料油が、機関にそれぞれ付属する油水分離器(以下「分離器」という。)、燃料油供給ポンプ、燃料油こし器、燃料噴射ポンプなどを順次経て、各シリンダの燃料噴射弁に至るもので、燃料油供給ポンプは、手動のプライミングポンプ及び50メッシュの金網フィルタを内蔵した機関直結駆動ポンプで、燃料油こし器は複式であり、燃料噴射ポンプ及び燃料噴射弁の漏油は、燃料油タンクに戻るようになっていた。
 また、分離器は、その外部を上半分がヘッドカバー及びケーシングで、下半分が透視ケースで構成され、ケーシングの内部には筒状のフィルタエレメントが、透視ケースの内部には分離板がそれぞれ取り付けられ、燃料油中に含まれるスラッジなどの異物は、同エレメントで除去されるとともに、分離された燃料油中の水分は、透視ケースに溜まって外から水分の滞留状況が見えるようになっており、必要に応じて最下部のドレン抜きちょうボルトを開けて排出できるようになっていた。
 主機の据付け工事を終えた伸栄丸は、A受審人が居住する福岡県皿垣開漁港に回航するため、造船所のある同県唐泊漁港を発することとしたが、主機は、他船から撤去されて伸栄丸に据え付けられるまでの間、付属の分離器に燃料油中や配管中などの異物が付着しており、フィルタエレメントが目詰まりした状態となっていた。
 このときA受審人は、回航中、燃料油に起因する不具合が生じることのないよう、燃料油系統の配管を念入りに点検し、同系統の入口側端にあって、機関保管中に不用な異物などが付着しやすい分離器を開放して掃除するなど、分離器の整備に万全を期す必要があったものの、分離器下半分の透視ケース内部に水分が滞留していなかったので大丈夫と思い、分離器の整備を十分に行わないまま回航の準備を終えた。
 こうして伸栄丸は、平成15年7月13日07時00分、燃料油タンクに900リットルの燃料油を追加して同タンクを満杯とし、A受審人ほか2人が乗り組み、船首0.5メートル船尾0.6メートルの喫水をもって唐泊漁港を発し、主機の回転数を毎分1,600、対地速力16ノットとして皿垣開漁港に向けて回航中、分離器のフィルタエレメントの目詰まりが更に進行したことから、同日08時20分加唐島灯台から真方位357度1,200メートルの地点において、分離器が閉塞して燃料油の供給が途絶え、主機の回転数が突然低下し、直後に自停した。
 当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、海上には白波があった。
 A受審人は、直ちに機関室に赴き、分離器を開放したところ、内部にスラッジや繊維状の異物が著しく付着しているのを認め、同異物などを除去して分離器の掃除と復旧を行ったものの、燃料油系統の空気抜きの措置などに手間取り、やがて伸栄丸は、主機の再始動が不能となるに至って救助を要請し、来援した救助船により佐賀県唐津港に引き付けられた。 

(原因)
 本件運航阻害は、中古で購入した主機を機関室に据え付けた際、燃料油供給系統にある油水分離器の整備が不十分で、据付け工事を終えて回航中、同分離器のフィルタエレメントが著しく目詰まりし、主機が自停したのち、再始動が不能となったことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、主機が搭載されていない船体を中古で購入し、別途購入した中古の機関を主機として機関室に据え付けた場合、運航中に燃料油に起因する不具合が生じないよう、燃料油系統の供給管にある油水分離器の整備を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、油水分離器の外観を見て、透視ケースとなっている下半分の内部に水分が滞留していなかったので大丈夫と思い、フィルタエレメントの入っている同分離器の上半分を開放して掃除するなど、油水分離器の整備を十分に行わなかった職務上の過失により、主機の据付けを終えて回航中、据付け前から目詰まり気味であった同エレメントが、発航後短時間に著しく目詰まりが進行し、同分離器が閉塞して燃料油の供給が途絶え、主機の回転数が突然低下し、直後に自停する事態を招き、その後燃料油系統の空気抜きができなくなって再始動が不能となり、救助を要請して最寄りの港に引き付けられるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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