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平成15年広審第103号
件名

プレジャーボートヤマムラ火災事件

事件区分
火災事件
言渡年月日
平成16年1月21日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(西林 眞、高橋昭雄、道前洋志)

理事官
平井 透

受審人
A 職名:ヤマムラ船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
蓄電池から排気ファンに至る電気配線が溶解して軟銅線が露出、同ファン、吸音材及び主機の付属機器などが焼損

原因
機関室電気配線の点検不十分

主文

 本件火災は、機関室電気配線の点検が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月19日12時20分
 広島湾
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートヤマムラ
総トン数 3.6トン
全長 10.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 180キロワット

3 事実の経過
 ヤマムラは、平成3年11月に進水したFRP製遊漁船兼交通船で、甲板下には船首から順に前部物入れ、前部いけす、機関室、蓄電池置場、後部いけす及び後部物入れなどを配置し、機関室の両舷側に側壁で隔てられた燃料油タンクをそれぞれ備え、甲板上の船体中央部やや船尾寄りに設置された機関室囲壁前部の上方に操舵室が設けられていた。
 機関室は、長さ約3メートル、幅約1.5メートル及び高さ約1.2メートルの区画で、操舵室の船尾に出入口ハッチを備え、中央に蓄電池充電用発電機及びポンプ類を直結した主機を据え付け、天井、前部隔壁、後部隔壁及び両舷側壁には表面に小さな凹凸のあるウレタンフォームを主材料とする吸音材を張り詰め、主機まわりの床面に木製すのこを敷き、操舵室両舷側壁の船首方中央部及び船尾方下部、並びに機関室囲壁船尾両舷の合計6箇所に通風口を設けており、このうち操舵室左舷側壁の通風口には、船首方に壁面取付形の電動給気ファン(以下、電動ファンについては「電動」を省略する。)が、船尾方に同形の排気ファンがそれぞれ取り付けられていた。
 また、船内の電気系統は、蓄電池置場に格納した12ボルト150アンペア時の鉛蓄電池2個を直列に接続して直流24ボルト電源とし、充電用及び給電用の電気配線がすべて機関室を通り、キースイッチを経て主機セルモータに給電するほか、操舵室に設けられたスイッチ操作盤を介して航海機器、航海灯、室内灯及び機関室両ファンなどに給電するようになっており、このうち両ファンには、蓄電池から同操作盤を経由する独立した2心のビニル絶縁ビニルキャプタイヤケーブルが吸音材に沿うようにそれぞれ敷設されていた。
 A受審人(昭和55年7月四級小型船舶操縦士免許取得)は、ヤマムラを新造船として購入以来船長として乗り組み、主として遊漁船業を営むかたわら、私的な釣りなどの海上レジャーにも使用し、操船とともに機関及び電気設備の運転保守に当たっていたもので、主機の開放整備を3ないし4年ごとに整備業者に依頼して行うようにし、平成10年には蓄電池を新替えしたが、機関室内の電気配線については、それまで不具合が発生していなかったので支障ないものと思い、購入して以降、電気整備業者に依頼するなどして点検を十分に行っていなかったので、高い室内温度や油分等により排気ファンへの同配線ビニル被覆の劣化が進行して細かい亀裂などが生じていることに気付かないまま運航を続けていた。
 こうして、ヤマムラは、A受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、私的な釣りの目的で、同12年7月19日05時30分広島県広島港丹那漁業協同組合前の船溜まりを発して山口県保高島の沖合に至り、流し釣りを行ったのち12時00分に帰途につき、機関室両ファンを運転しながら航行中、ビニル被覆の劣化が進行していた排気ファンへの電気配線が発熱して線間短絡を生じ、溶解した同被覆に着火して付近の吸音材に燃え拡がり、12時20分安芸白石灯標から真方位143度2.7海里の地点において、機関室が火災となった。
 当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、海上は穏やかであった。
 操船中のA受審人は、船尾にいた同乗者から操舵室左舷側の通風口から黒煙が出ていることを知らされ、主機を停止して機関室出入口ハッチを開けたところ、大量の黒煙が噴出して同室左舷後方に炎が見えたため、同乗者に118番通報させて救援を求める一方、いけすの海水をバケツでかけて消火に当たり、同時25分に鎮火したことを認めた。
 ヤマムラは、広島海上保安部の手配した救助艇によって広島県佐伯郡大柿町に所在する沖野島マリーナに引き付けられ、機関室などを点検した結果、蓄電池から排気ファンに至る電気配線が溶解して軟銅線が露出しており、同ファン、吸音材及び主機の付属機器などが焼損していることが判明し、のちいずれも新替えするなどの修理が行われた。 

(原因)
 本件火災は、機関室電気配線の点検が不十分で、広島湾を航行中、経年で絶縁劣化した同室排気ファンの同配線が線間短絡し、溶解したビニル被覆に着火したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、操船とともに機関及び電気設備の運転保守に当たる場合、機関室の電気配線が長期間使用されていたことにより、高い室内温度や油分等で絶縁被覆の劣化が進行するおそれがあったから、電気整備業者に依頼するなどして同室電気配線の点検を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、それまで不具合が発生していなかったので支障ないものと思い、機関室電気配線の点検を十分に行わなかった職務上の過失により、絶縁劣化の進行した排気ファンの同配線が線間短絡し、溶解したビニル被覆に着火するとともに吸音材に燃え拡がって同室の火災を招き、同ファン、吸音材及び主機の付属機器などを焼損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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