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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成16年長審第1号
件名

漁船第三勢力丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年3月23日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(原 清澄、清重隆彦、寺戸和夫)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:第三勢力丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部を圧壊、推進器翼及び舵に損傷を生じて廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年12月17日02時00分
 長崎県的山大島東端
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三勢力丸
総トン数 4.8トン
全長 14.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70

3 事実の経過
 第三勢力丸(以下「勢力丸」という。)は、長崎県厳原港を基地としてイカの一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、一級小型船舶操縦士免許(昭和50年3月取得)を有するA受審人が1人で乗り組み、根拠地に帰港する目的で、船首0.50メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、平成15年12月16日20時00分厳原港を発し、同県須川港に向かった。
 翌17日01時38分少し前A受審人は、的山大島長崎鼻灯台から041度(真方位、以下同じ。)3.55海里の地点に達したとき、的山大島の大賀鼻を800メートルばかり離すこととなる、針路を189度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力(「以下「速力」という。)とし、折からの西風の影響を計るつもりで、8度右に当て舵を取り、197度の針路として自動操舵により進行した。
 01時50分A受審人は、ストーブをつけ、舵輪の右後方に設置したいすに腰をかけて船橋当直に当たっていたところ、少し眠気を催すようになったので、立ち上がって眠気を覚ますためにストーブを消したが、今まで当直中に眠ってしまったことがなかったので、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、舵を手動に切り替え、立ったまま操舵に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
 01時55分A受審人は、的山大島長崎鼻灯台から094度1.55海里の地点に達したとき、折から風邪気味でもあったことから、再びいすに腰をかけて周囲の見張りに当たっていたところ、まもなく居眠りに陥り、自船が予想に反して風下に落とされずに進行していることに気付かないまま続航した。
 こうして勢力丸は、A受審人が居眠りしていて針路が元に戻されないまま進行中、02時00分的山大島長崎鼻灯台から123度1.51海里の地点に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力4の西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、船首部を圧壊し、推進器翼及び舵に損傷を生じて廃船とされた。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、長崎県的山大島東岸沖合を南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同島大賀鼻に向けて進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、長崎県的山大島東岸沖合を自動操舵として南下中、眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう、舵を手動に切り替え、立って操舵に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、今まで船橋当直中に眠ってしまったことがなかったので、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、舵を手動に切り替え、立って操舵に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いすに腰をかけ、原針路、原速力を保ったまま進行し、まもなく居眠りに陥り、的山大島の大賀鼻への乗揚を招き、船首部を圧壊するなどの損傷を生じさせ、廃船とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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