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平成15年横審第117号
件名

遊漁船富丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年3月16日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(大本直宏)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:富丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部船底外板に破口
船長ほか釣り客6人が頚椎捻挫、骨折等の負傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月19日16時55分
 若郷漁港(東京都新島村)
 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船富丸
総トン数 12トン
全長 17.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 478キロワット

3 事実の経過
 富丸は、船体中央部やや後方に操舵室のあるFRP製の小型兼用船で、A受審人(平成15年1月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、釣客8人を乗せ、船首0.2メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成15年7月19日15時35分静岡県下田港を発し、東京都新島に所在の若郷漁港に向かった。
 ところで、若郷漁港は、新島の北西端部に位置し、天然の湾形を活用した漁港で、西側に屈曲した形状の防波堤が北方に伸びており、同防波堤北端中央部に、黄光を発する立標(以下「若郷立標」という。)が設けられていた。
 これより先、A受審人は、同月17日21時30分若郷漁港を発し、23時00分下田港へ寄港したが、折から同港を基地にカジキマグロの釣大会を開催中で、同大会参加のクルーザー等多数が集結し夜間も騒がしく、翌18日も周囲の騒音が気になって熟睡できず、いつものように翌々19日02時30分下田港を発し、新島付近で遊漁を行い、14時ごろ同港に帰り、ほぼ1時間30分後に発航を迎えたので、やや睡眠不足気味であった。
 A受審人は、15時45分神子元島(みこもとじま)灯台から020度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点に達したとき、針路を127度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 16時40分A受審人は、利島(としま)島頂(508メートル)から226度4.5海里の地点に差し掛かり、椅子(いす)に座っているうち眠気を感じたが、入港まで大丈夫と思い、睡眠不足気味のうえ同じ姿勢でいると、居眠りに陥りやすいから、椅子から立ち上がって外気にあたるなど、居眠り運航の防止措置をとらずに続航した。
 こうして、A受審人は、16時54分半、若郷立標から352度195メートルの地点で、入港操船に備えて手動操舵に切り替えた直後、入港間近となって居眠りに陥り、若郷漁港北東方の消波ブロックへ向首進行していることに気付かず、富丸は、16時55分若郷立標から083度200メートルの同ブロックに、原針路原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の南南西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船首部船底外板に破口を生じたが、のち修理され、A受審人ほか釣り客6人が頚椎捻挫、骨折等を負った。 

(原因)
 本件乗揚は、静岡県下田港から東京都新島の若郷漁港に向け航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同漁港北東方の消波ブロックへ向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、静岡県下田港から東京都新島の若郷漁港に向け航行中、航海当直に当たり、椅子に座っているうち眠気を感じた場合、睡眠不足気味のうえ同じ姿勢でいると、居眠りに陥りやすいから、椅子から立ち上がって外気にあたるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかし、同人は、入港まで大丈夫と思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、同漁港北東方の消波ブロックへ向首進行して、同ブロックへの乗揚を招き、船首部船底外板に破口を生じさせ、自らと釣り客6人に頚椎捻挫、骨折等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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