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平成15年那審第52号
件名

漁船海邦丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年2月26日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:海邦丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首船底に擦過傷、推進器翼に折損及び舵に曲損等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月25日23時30分
 沖縄県久高島北東方ウフビシ
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船海邦丸
総トン数 6.7トン
登録長 14.32メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 405キロワット

3 事実の経過
 海邦丸は、平成14年9月に進水し、船体中央部からやや後方に操舵室を設けたそでいか旗流し漁業などに従事するFRP製漁船で、本船の新造後父親と一緒に乗り組んで操業に従事し、同15年2月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が船長として甲板員1人と乗り組み、同旗流し漁の目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同年3月23日23時00分沖縄県金武中城港内の泡瀬漁港を発し、同漁港東南東方約43海里の漁場に向かった。
 翌24日04時00分A受審人は、漁場に至って操業を開始し、目印の旗に付けた漁具21本を潮上から投入し、その後浮子の沈み具合を見ていて沈んだものがあれば漁具を引き揚げて漁獲物を船内に取り込んだあと漁具を再び投入し、元の地点から潮流に従って数海里流されたところでは、漁具を全部引き揚げて潮上りして元の地点に戻り、何度かこれを繰り返して21時00分ごろその日の漁を終えた。その直後同人は、自船の北東方で操業する他船の無線を聞き、その漁模様が良さそうなので、自船の漁獲があまり良くなかったことから、北東方に移動することとして漁場を発進し、翌々25日00時00分ごろ泡瀬漁港の東方約69海里の、北緯26度29.5分東経129度06.8分の地点に移動し、機関を停止して漂泊し、漁具の後片付けなどを終えたのち02時00分ごろから仮眠を始めた。
 06時00分ごろA受審人は、起床して漁具の準備などを済ませたあと漁場に向けて移動を開始し、09時30分ごろから操業を始め、19時30分ごろ漁を終え、20時00分泡瀬漁港東南東方約38海里の、北緯26度04.8分東経128度29.6分の地点を発進して帰途についた。
 発進したとき、A受審人は、前方に速力の遅い同航漁船2隻と同漁船が設置した漁具の点滅灯を認めたので、機関を半速力前進にかけ、それらを避けて8.0ノットの対水速力で西行したのち、20時30分久高島灯台から097度(真方位、以下同じ。)29.1海里の地点に達したとき、針路を中城湾東部の出入口である二ツ口に向首する286度に定めて自動操舵とし、同一速力で進行した。
 A受審人は、針路を定めて間もなく、操舵室右舷側後部のいすに腰掛けて当直に当たっていたところ、2日間の操業で約4時間の仮眠をとっただけで、疲労が蓄積していて睡眠不足であったうえ、漁場発進時から熱があって体調が悪かったことから、眠気を催すようになったが、休息中の甲板員を起こして当直を交代するなどの居眠り運航の防止措置をとらないで続航するうち、やがて居眠りに陥った。
 A受審人は、折からの風潮流により5度左方に圧流されながら実効針路が281度となって8.8ノットの対地速力で、久高島北東方の干出さんご礁帯ウフビシ南端の浅礁に向首接近する状況であったが、居眠りをしていてこのことに気付かずに進行中、23時30分久高島灯台から063.5度3.3海里の地点において、海邦丸は、原針路、原速力のまま、同浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、付近海域には約1ノットの南西流があった。
 乗揚の結果、船首船底に擦過傷、推進器翼に折損及び舵に曲損等を生じたが、救助船により引き下ろされ、のち修理された。また、A受審人と甲板員1人は海上保安庁のヘリコプターによって救助された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県久高島東方沖合を漁場から同県泡瀬漁港に向けて帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、風潮流により圧流され、同島北東方の干出さんご礁帯ウフビシ南端の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県久高島東方沖合を漁場から同県泡瀬漁港に向けて西行中、操業による疲労の蓄積と睡眠不足のほか、体調不良で眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を起こして当直を交代するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、いすに腰掛けたまま当直を続け、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、風潮流に圧流されていることに気付かないまま、干出さんご礁帯ウフビシ南端の浅礁に向首進行して乗揚を招き、海邦丸の船首船底に擦過傷、推進器翼に折損及び舵に曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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