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平成15年那審第56号
件名

漁船大聖丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年2月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(小須田 敏)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:大聖丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底に破口、その後廃船処理

原因
錨地選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は、裾礁外縁から十分離れた地点に投錨しなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年2月17日23時20分
 鹿児島県奄美大島仲干瀬埼南岸
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船大聖丸
総トン数 2.6トン
登録長 7.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 95キロワット

3 事実の経過
 大聖丸は、主に簡易潜水器漁業に従事する船体中央部船尾寄りに操舵室を設けたFRP製漁船で、昭和55年8月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、あおぶだい漁などの目的で、船首0.2メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成15年2月17日18時00分鹿児島県奄美大島小湊(三方)漁港を発し、同島東岸にある仲干瀬埼の南岸沖漁場に向かった。
 A受審人は、18時15分仲干瀬埼南岸に拡延する裾礁外縁から約20メートル沖にあたる、同埼にある三角点(標高220.3メートル、以下「仲干瀬埼三角点」という。)から221.5度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの水深10メートルの地点に至ったことを目測で知り、船首から約7キログラムの鉄製四つめ錨を投げ入れ、いつものようにアンカーリングに結んだ合成繊維製錨索を17メートル延出して錨泊し、折からの北東風を受けて陸岸に向首した状態で操業を始めた。
 ところで、A受審人は、数多く前示地点付近において操業していたので、海底の様子も恒常的に北東方に流れる微弱な潮が存在することなども知っており、南寄りの風が予想されるときには、船尾が裾礁外縁に近づくことのないよう、延出する錨索の長さなどを考慮し、同外縁から約30メートル離して錨を入れるようにしていたが、発航するにあたり、テレビ放送の天気予報から判断して北寄りの風が続くものと思い、平素よりも裾礁外縁近くに錨を入れたものであった。
 A受審人は、その後適宜休憩をとりながら操業を繰り返していたところ、いつしか風勢が弱まるとともに風向も南南東に変わり、船尾が風潮流の影響を受けて次第に裾礁外縁に接近する状況となっていたものの、全天が積雲で覆われていたうえに、付近に目印となる灯火などもなかったことから、このことに気付かず、22時40分空気ボンベなどの潜水用具を装着し、約1時間の操業予定で海中に入った。
 A受審人は、芳しい漁獲を得ることができなかったため、23時18分ごろ操業を切り上げて浮上したとき、船尾が裾礁外縁に著しく接近していることを初めて知り、急いで船上に戻ったものの、時既に遅く、大聖丸は、23時20分仲干瀬埼三角点から222.5度1,200メートルの地点において、船首を南南東方に向けた状態で、その船尾が裾礁外縁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力1の南南東風が吹き、潮候は大潮の下げ潮中央期にあたり、日没時刻は18時13分であった。
 乗揚の結果、船底に破口を生じ、その後廃船処理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、鹿児島県奄美大島仲干瀬埼南岸において、操業のため、その裾礁外縁沖に錨泊する際、同外縁から十分離れた地点に投錨しなかったことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、鹿児島県奄美大島仲干瀬埼南岸において、操業のため、その裾礁外縁沖に錨泊する場合、延出する錨索の長さや風向の変化などを考慮し、同外縁から十分離れた地点に投錨すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、天気予報から判断して北寄りの風が続くものと思い、仲干瀬埼南岸に拡延する裾礁外縁から十分離れた地点に投錨しなかった職務上の過失により、南寄りに変化した風と恒常的に北東方に流れる微弱な潮とにより、船尾が同外縁に著しく接近して乗揚を招き、船底に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。





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