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平成15年神審第89号
件名

プレジャーボートりさ丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年2月10日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:りさ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底中央部外板に亀裂を伴う凹損及び船尾キール部に凹損
同乗者が約4週間の安静加療を要する肋骨骨折

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年5月18日14時25分
 高知県宿毛湾
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートりさ丸
登録長 8.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 139キロワット

3 事実の経過
 りさ丸は、GPSプロッターを装備したFRP製プレジャーボートで、平成13年5月交付の四級小型船舶操縦士の免状を受有するA受審人が1人で乗り組み、友人1人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成15年5月18日07時ごろ高知県宿毛市小筑紫町小筑紫海岸を発し、同日07時45分沖ノ島北方の釣場に達して魚釣りを開始した。
 A受審人は、釣場を東方に変更しながら魚釣りを続けたが、釣果が得られなかったので、帰途につくこととして14時00分柏島灯台から256度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点から、GPSプロッターに残してあった前日の航跡をたどりながら同県白埼北方の小島に寄せて航行する予定で手動操舵により北上した。
 このとき、A受審人は、操舵室の椅子に腰掛けて操舵を行い、同乗者は、操舵室の後方で前方を向いてクーラーボックスに腰掛けていた。
 ところで、小島に寄せて航行するときには、その北方220メートルに洗岩が存在していたので、洗岩に接近しないよう十分に注意が必要であった。
 A受審人は、釣り仲間から小島の北方に危険な岩礁が存在することを聞いていたが、小島の沖を何度か航行し何事もなかったのでこれまでどおりにやれば大丈夫と思い、発航前、小島周辺が表記された海図(W1237)にあたってその岩礁の正確な位置やそれが洗岩であることを確認するなど水路調査を十分に行っていなかった。
 A受審人は、14時19分半少し前白埼灯台から204度1.2海里の地点に達したとき、手動操舵のまま針路を015度に定め、機関を全速力前進にかけ、15.0ノットの対地速力で進行した。
 定針したとき、A受審人は、船首が白埼北方の洗岩に向かう態勢となっていたが、水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 こうして、14時25分りさ丸は、白埼灯台から347度650メートルの洗岩に、原針路原速力のまま乗り揚げ、これを擦過した。
 当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、船底中央部外板に亀裂を伴う凹損及び船尾キール部に凹損を生じたが、のち修理され、また、同乗者が乗揚の衝撃で腰掛けていたクーラーボックスから飛ばされて約4週間の安静加療を要する肋骨骨折を負った。 

(原因)
 本件乗揚は、発航にあたり、水路調査が不十分で、高知県宿毛湾小島北方の洗岩に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、高知県宿毛湾において、白埼北方の小島に寄せて航行するつもりで発航する場合、釣り仲間から小島の北方に危険な岩礁が存在することを聞いていたが、詳細について知らなかったのであるから、発航に先立ち海図にあたってその岩礁の正確な位置やそれが洗岩であることを確認するなど水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、小島の沖を何度か航行して何事もなかったのでこれまでどおりにやれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、小島の北方にある洗岩の存在に気付かず、洗岩に向首進行して乗揚を招き、りさ丸の船底中央部外板に亀裂を伴う凹損などを生じさせ、同乗者に肋骨骨折を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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