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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成15年仙審第46号
件名

漁船第十七渚丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年2月24日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(内山欽郎)

理事官
弓田邦雄

受審人
A 職名:第十七渚丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船体が大破して全損

原因
圧流防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、停止した船外機の点検を行う際の圧流防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年4月30日06時55分
 新潟県新潟港西区
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十七渚丸
総トン数 1.1トン
全長 7.36メートル
機関の種類 ディーゼル機関・電気点火機関
出力 26.5キロワット・7.3キロワット

3 事実の経過
 第十七渚丸(以下「渚丸」という。)は、ディーゼル機関の船外機(以下「主船外機」という。)と電気点火機関の船外機(以下「予備船外機」という。)を各1機備えたFRP製の小型兼用船で、昭和50年2月取得の一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み、かごはえ縄漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成15年4月30日05時ころ新潟県新潟港西区に流入する信濃川河口右岸の係留地を発し、新潟港西区西突堤(以下、突堤及び防波堤の名称は新潟港西区を省略する。)北端の新潟港西区西突堤灯台(以下「西突堤灯台」という。)から西南西方約1.7海里の漁場に向かった。
 A受審人は、05時30分ころ漁場に至って操業を開始したものの、出港前に確認した天気予報のとおり風が強まってきたので操業を中止し、06時30分西突堤灯台から244度(真方位、以下同じ。)1.7海里の地点を発進して帰途に就き、西突堤北端と第1西防波堤南端間を通航するため、針路を064度に定め、主船外機を全速力前進にかけて、10.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
 06時33分、A受審人は、主船外機が突然停止したので同機の燃料油系統を点検したところ、燃料油タンク出口管に接続されたゴム製チューブの継手の爪が外れているのを認めたので、燃料油系統に空気が混入したものと判断したが、風が強くなってきていたので係留地に戻ってから処置する方がよいと考え、同時36分直ちに予備船外機を始動して5.0ノットの速力で続航した。
 06時50分、A受審人は、西突堤灯台から297度60メートルの地点において、今度は予備船外機が停止したので、早く始動して帰港しなければと考えて同船外機を点検することに気を奪われ、近くに防波堤があったが、錨を投下するなどの圧流防止措置を取らないまま点検を開始した。
 こうして、渚丸は、A受審人が予備船外機の点検を行っている間に風によって第1西防波堤方向に圧流され、06時55分西突堤灯台から352度80メートルの地点で、同防波堤の消波ブロックに乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の西南西風が吹き、潮侯は下げ潮の末期であった。
 この結果、渚丸は、消波ブロック上で波に揉まれているうちに船体が大破して全損となった。 

(原因)
 本件乗揚は、新潟県新潟港において、風が強まりつつある状況下で帰港中、停止した船外機の点検を行う際、圧流防止措置が不十分で、第1西防波堤方向に圧流されたことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、新潟県新潟港において、風が強まりつつある状況下で帰港中、停止した船外機の点検を行う場合、近くに防波堤があったから、防波堤方向に圧流されることのないよう、錨を投下するなどの圧流防止措置を取ってから点検を行うべき注意義務があった。ところが、同人は、早く始動して帰港しなければと考えて船外機を点検することに気を奪われ、圧流防止措置を取らないまま点検を行った職務上の過失により、圧流されて第1西防波堤の消波ブロックへ乗り揚げる事態を招き、その後、波に揉まれて船体を大破させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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