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平成15年那審第20号
件名

漁船海王丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年1月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(小須田 敏)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:海王丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口、舵柱、推進器翼及びシューピースに曲損、主機関に濡損など、その後廃船処理

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年1月10日00時45分
 沖縄県宮古列島水納島西岸沖
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船海王丸
総トン数 7.03トン
登録長 11.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 海王丸は、船体中央部船尾寄りに船室と操舵室を設け、雑漁業などに従事するFRP製漁船で、昭和60年7月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人ほか甲板員1人が乗り組み、素潜り漁の目的で、船首0.4メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年1月9日16時00分沖縄県宮古島平良港内の係留地を発し、同県宮古列島水納島南西岸沖の漁場に向かった。
 ところで、A受審人は、夜間、主に水納島の裾礁外縁近くで水深が4ないし5メートルのところに錨を入れて素潜り漁を行うため、裾礁に沿って漁場内を移動するとき及び操業のため同外縁に向けて進行するときには、操舵室の屋根に備えていた投光器で船首方を照らし、点灯した水中用ライトを持った甲板員とともに、遠隔管制器を携えて船首部に立ち、機関を極微速力前進にかけ、海底の状況などに注意しながらゆっくりと進行するようにしていた。また、航海計器としてGPSプロッター、レーダー及び魚群探知機などを操舵室内前部に備え、同プロッターの画面上に水納島の裾礁外縁付近を線で表示させていた。
 A受審人は、18時30分漁場に到着し、水納島の裾礁外縁近くに錨を入れて操業を始め、その後同外縁沿いの数箇所で操業を繰り返したところで、翌10日00時27分わずか過ぎ同島西端沖に移動することとし、宮古水納島灯台(以下「水納島灯台」という。)から258度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点を発進し、手動操舵により針路を312度に定め、機関を極微速力前進にかけて3.0ノットの対地速力で同外縁に沿って進行した。
 A受審人は、その後レーダー及び魚群探知機を止めたまま、いつものように甲板員とともに船首部に立って前路の見張りを行うとともに、水納島の島影を見ながら目測で裾礁外縁の約100メートル沖を続航中、降り始めた小雨により、同島影が視認しにくい状況となったことから、00時35分同見張りを甲板員に任せ、自らは操舵室内に備えたGPSプロッターで船位を確認しながら操船に当たることとし、甲板員に対して裾礁外縁に著しく接近するようであれば、水中用ライトで合図するよう指示して操舵室の後方に移動した。
 A受審人は、その後操舵室左舷後方の甲板上に立ち、周囲の見張りを行う一方、GPSプロッターで裾礁外縁の張り出し状況などを見ながら操船に当たり、00時38分半水納島灯台から278度2,400メートルの地点に達したとき、操業のため右転して同外縁に向けて進行することとしたが、同プロッターに表示させていた裾礁外縁付近を示す線に自船マークが接しなければ乗り揚げることはないものと思い、魚群探知機を作動させて水深の減少状況から同外縁までの距離を判断するなど、船位の確認を十分に行うことなく、針路を348度に転じて続航した。
 A受審人は、00時45分わずか前自船マークが裾礁外縁付近を示す線に迫ったことから、行きあしを止める時機を見定めようとGPSプロッターの画面を注視することに気をとられ、依然として船位の確認を十分に行わなかったばかりか、甲板員が水中用ライトで送った合図にも気付かないまま、同じ針路、速力で進行し、海王丸は、00時45分水納島灯台から291度2,630メートルの地点において、水納島の裾礁外縁に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力3の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、船底外板に破口、舵柱、推進器翼及びシューピースに曲損、主機関に濡損などを生じ、その後廃船処理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県宮古列島水納島西岸沖において、操業のため同島の裾礁外縁に向けて進行する際、船位の確認が不十分で、同外縁に著しく接近したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県宮古列島水納島西岸沖において、操業のため同島の裾礁外縁に向けて進行する場合、同外縁に著しく接近して乗り揚げることのないよう、魚群探知機を作動させて水深の減少状況から同外縁までの距離を判断するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、GPSプロッターの画面に裾礁外縁付近を線で表示させていたことから、自船マークが同線に接しなければ乗り揚げることはないものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、水納島の裾礁外縁に著しく接近して乗揚を招き、船底外板に破口、舵柱、推進器翼及びシューピースに曲損、主機関に濡損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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