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2. MSC/Circ.850
 MSC/Circ.850の内容は以下の通り。
1. 適用
2. 操作の準備
3. 保守及び試験
4. 週ごとの試験及び点検
5. 月ごとの試験及び点検
6. 四半期ごとの試験及び点検
7. 年次試験及び点検
8. 5年ごとの試験及び点検
 
1. 適用
 本指針は全ての船舶に適用される。ただし、全ての消防設備の保守項目を網羅するものではなく、勧告としてのみ用いられる。
 
2. 操作の準備
 全ての防火・消火設備は常に良好な状態を保ち、本船が航海中、直ちに使用できる状態にしておく必要がある。防火・消火設備が修理中の場合、適切な処理により安全性が損なわれていないことを確保する必要がある。
 
3. 保守及び試験
 船上保守及び試験のための手引書は、容易に理解でき、可能な限り図解され、かつ必要に応じて、設備或いは装置ごとに次の事項を含むものとする。
.1 保守及び修理の手引書
.2 定期的保守のスケジュール
.3 交換可能部品リスト
.4 確認された不具合及びそれらの修理目標日を記載した点検・保守記録結果を記録するためのログブック
 
4. 週ごとの試験及び点検
.1 全ての船内通報装置及び一般非常警報装置が正しく機能する。
.2 呼吸具用シリンダーに漏れがない。
 
5. 月ごとの試験及び点検
.1 全ての消防員装具、消火器、消火栓、ホース及びノズルが所定の場所に適切に配置され、良好な状態である。
.2 全ての固定式消火器の止め弁が正しく開放・閉鎖位置を示し、乾式スプリンクラーシステムが圧力計に示されている通りの適切な圧力である。
.3 スプリンクラーシステムの圧力タンクがガラス式水面計に示されている通りの正しい水面位置である。
.4 全てのスプリンクラーシステムポンプが圧力低下に伴い自動的に作動する。
.5 全ての消火ポンプの操作。
.6 消火性ガスを使用している全ての固定式消火器に漏れがない。
 
6. 四半期ごとの試験及び点検
.1 スプリンクラーシステムの全ての自動警報装置を各区画のテストバルブを用いて試験する。
.2 国際陸上施設連結具が良好な状態にある。
.3 消火設備器具保管のためのロッカーに適切な在庫目録を含むこと、及び、設備が良好な状態である。
.4 全ての防火ドア及び防火ダンパーを現場にて試験する。
.5 固定式消火装置ケーブル操作装置の止め金具と全てのCO2ボトルの連結部に緩みがない。
 
7. 年次試験及び点検
.1 全ての消火器が適切な位置にあり、圧力及び状態が良好である。
.2 火災探知装置が正しく作動するか試験を行う。
.3 全ての防火ドア及び防火ダンパを遠隔操作で試験する。
.4 全ての泡・水及び水噴霧固定式消火装置の操作試験を行う。
.5 固定式消火装置の近づくことのできる全ての部分が適切な状態であることを目視検査にて確認する。
.6 スプリンクラーシステムポンプを含む全ての消防ポンプを適切な圧力・流量にて通水試験を行う。
.7 全ての消火栓の操作試験を行う。
.8 全ての凍結防止システムが適切な状態である。
.9 本船の主消火装置に繋がるスプリンクラーシステムの操作試験を行う。
.10 全ての消火ホースの水圧試験を行う。
.11 呼吸具用空気充填装置の空気の良否を確認する。
.12 固定式消火装置の制御弁を点検する。
.13 消火ガス装置において通気試験をする。
 
8. 5年ごとの試験及び点検
.1 自蔵式呼吸具シリンダーに水圧試験を行う。
.2 固定式消火装置の制御弁の内部点検を行う。
 
MSC/Circ.850では
1. 整備を行う者に関する規定がない。
2. 固定式消火設備に関する水圧試験等、設備・試験によって規定がないものが多数ある。
 
3. 各国特別要件一覧
 現在の所、特別要件を通知してきた主官庁は以下の通り(50音順)。尚、“TEC No.”は、本会より発行しているClassNKテクニカル・インフォメーションの発行番号を示す。
 
MSC/Circ.850と各国特別要件の代表的な相違点
1. 整備を行う者を明確にした旗国がある。
2. 固定式消火装置のシリンダーにも水圧試験を行う。
 
国名 TEC No. 国名 TEC No.
1. オランダ 0610 9. ベトナム 0521
2. キプロス 0428、0572 10. ホンコン 0602
3. ギリシャ 0565 11. マーシャル 0421
4. クウェート 0510 12. マルタ 0548
5. シンガポール 0520、0571 13. マレーシア 0472
6. スイス 0411 14. マン島 0554
7. パナマ 0511 15. リベリア 0421
8. バハマ 0410、0424、0477
 
4. パナマ特別要件
 2003年4月発行のMerchant Marine Circular No.122にて、消防設備の保守・点検及び試験に関する特別要件を通知。保守・点検及び試験に関する内容は以下の通り。
1. 適用
 本要件は全ての船舶に適用する。
 
2. 保守及び試験
 船上における保守及び試験のための手引書は、容易に理解できるもので、可能な限り図解され、かつ必要に応じて各設備或いは装置ごとに次のことを含むものとする。
.1 保守及び修理のための手引書
.2 定期的な保守計画書
.3 交換可能な部品の一覧表
.4 確認された不具合及びそれらの修理目標日を記載した点検・保守結果を記録するためのログブック
 
3. 週ごとの試験及び点検
.1 全ての船内通報装置及び一般非常警報装置が正しく機能する。
.2 呼吸具用シリンダーに漏れがない。
 
4. 月ごとの試験及び点検
.1 全ての消防員装具、消火器、消火栓、ホース及びノズルが所定の場所の適切に配置され、良好な状態であること。
.2 全ての固定式消火器の止め弁が正しく開放・閉鎖位置を示し、乾式スプリンクラーシステムが圧力計に示されている通りの適切な圧力である。
.3 スプリンクラーシステムの圧力タンクがガラス式水面計に示されている通りの正しい水面位置である。
.4 全てのスプリンクラーシステムポンプが圧力低下に伴い自動的に作動する。
.5 全ての消火ポンプの操作。
.6 消火性ガスを使用している全ての固定式消火器に漏れがない。
 
5. 四半期ごとの試験及び点検
.1 スプリンクラーシステムの全ての自動警報装置を各区画のテストバルブを用いて試験する。
.2 国際陸上施設連結具が良好な状態にある。
.3 消火設備器具保管のためのロッカーに適切な在庫目録を含むこと、及び、設備が良好な状態である。
.4 全ての防火ドア及び防火ダンパーを現場にて試験する。
.5 固定式消火装置ケーブル操作装置の止め金具と全てのCO2ボトルの連結部に緩みがない。
 
6. 年次試験及び点検
.1 全ての消火器が本船の火災制御図に従い所定の位置にあり、充填圧力及び状態が良好である。
.2 必要に応じて火災探知装置が正しく作動するか試験を行う。
.3 全ての防火ドア及び防火ダンパを遠隔操作で試験する。
.4 全ての固定式水及び泡噴霧消火装置の操作試験を行う。
.5 固定式消火装置の全ての近づくことのできる部分が適切な状態であることを目視検査にて確認する。
.6 スプリンクラーシステムポンプを含む全ての消防ポンプを適切な圧力・流量にて通水試験を行う。
.7 全ての消火栓の操作試験を行う。
.8 全ての凍結防止システムが適切な状態である。
.9 本船の主消火装置に繋がるスプリンクラーシステムの操作試験を行う。
.10 全ての消火ホースの水圧試験を行う。
.11 耐火救命艇の空気自給装置用貯蔵容器を含む全ての自蔵式呼吸具の外観を点検し、空気充填装置の空気の良否を確認する。
.12 MSC/Circ.600に従い固定式ハロン消火装置の漏れ試験を行う。
.13 持運び式消火器及び自蔵式呼吸具のシリンダーの整備を行う。
 
7. 2年ごとの整備
.1 持運び式消火器及び自蔵式呼吸具のシリンダーは、整備業者による整備を受ける必要がある。
.2 固定式ガス消火装置の内容物の有効性の確認を行う。
.3 固定式ガス消火装置の配管の通気試験を整備業者により行う。
 
8. 3年ごとの整備
.1 固定式泡消火装置の最初の定期的な管理及びその泡原液の分析は、最初の充填日から3年目及びその後は毎年行う。泡原液の経過年数及びその後の管理状態を示す記録は船上に保管し、いつでも参照可能とする。
.2 上記の管理/分析は、独立した機関或いは製造者の試験所にて、MSC/Circ.582、670、798に従い行う。
 
9. 5年ごとの整備
.1 耐火救命艇の空気自給用貯蔵容器を含む全ての自蔵式呼吸具シリンダーの水圧試験を行う。
 
10. 10年ごとの整備
.1 固定式消火装置の制御弁の内部点検を行う。
.2 持運び式消火器シリンダーの水圧試験。
 
11. 20年ごとの整備
.1 固定式炭酸ガス消火装置の全シリンダーは、製造日から20年に達する前に水圧試験を行い、その後は10年毎に全シリンダーの水圧試験を行う。全シリンダーが各々定められた期日までに水圧試験を行うことを条件に、各水圧試験に供されるシリンダーの数は問わない。
 
パナマ特別要件に関する主な注意点
1. 整備を行う者を次の通り規定している。
.1 毎年要求される持運び式消火器及び自蔵式呼吸具シリンダーは整備業者或いは指名され、かつ訓練された航海士/機関士により行う。
.2 2年ごとに要求される持ち運び式消火器及び自蔵式呼吸具シリンダーの整備、及び固定式ガス消火装置の通気試験は整備業者により行う。
.3 5年、10年ごと及び20年目に要求される各水圧試験は、整備業者によって行う。
 “整備業者”とは消防設備の整備を行うことを、政府機関、IACS或いは同等な機関により認められたところを意味する。
2. 水圧試験の試験証明書は船上に保管し、いつでも参照可能な状態にしておく。
3. 自蔵式呼吸具とは消防員装具用、IBC/IGC Codeで規定される安全装具用自蔵式空気呼吸具及び耐火救命艇の空気自給装置用貯蔵容器を意味する。
4. 各水圧試験は次回ドックまで延期することが認められているが、起算日はあくまで2003年4月1日であり、以降の最初のドック時を超えて延期は認められない。
5. 保守計画書は、最低限パナマ特別要件を含むものに改訂しなければならない。


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