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平成16年10月
国土交通省
沿岸小型船舶の技術基準の設定について(概要)
1. 背景
 今やマリンレジャーは国民の余暇活動の一つとして認知されています。国土交通省としても、小型船舶に対する「安全」、「環境」及び「健全な利用振興」について、各種の施策を総合的に推進しているところです。
 このうち、安全面について、現在、小型船舶操縦士免許受有者の多くは、いわゆる沿岸小型船舶(日本全国周辺の沿海区域に接する海岸から5海里以内の水域及び平水区域を航行できる小型船舶)用の2級小型船舶操縦士の免許を持っています。
 一方、小型船舶の構造設備については、現在、沿岸小型船舶に対する技術基準が設けられていないため、日本各地の沿岸を周遊するような長距離のクルージングを楽しみたい場合などには、沿海区域(日本全国周辺の海岸から20海里以内の水域)の技術基準に適合した船舶を使用する必要があります。
 このため、今般、沿岸周辺の水域を航行する小型船舶について、ソフトの要件(船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく免許)の航行区域に係る規制区分と整合させた新たなハードの要件(船舶安全法に基づく技術基準)を設けることにより、小型船舶の利用環境の整備を図ります。
 
2. 改正の内容
 小型船舶安全規則(以下「小安則」という。)第2条に規定される小型船舶(長さ24メートル未満のプレジャーボート及び総トン数20トン未満の船舶(水上オートバイ等の特殊小型船舶を除く。))について、2級小型船舶操縦士の免許で航行できる水域と同じ水域(沿岸水域)を航行する小型船舶の技術基準を新たに設けます。
 なお、この技術基準は、沿海区域の技術基準に比べて航海用具、救命設備、無線設備等の基準を一部緩和したものとなります。
 また、限定沿海小型船舶(航行区域が沿海区域のうち母港から当該船舶の最強速力で2時間以内に往復できる区域に限定された小型船舶)については、航海用具等の一部の設備を増備することで、航行区域に沿岸水域を追加することが可能となります。
 
3. スケジュール
平成16年10月28日 新小安則等の公布
11月 1日 新小安則等の施行
    新小安則による検査業務開始
 
沿海・限定沿海・沿岸小型船舶の技術基準の比較
(旅客船以外の場合)
 
技術基準 沿海
(距岸20海里)
小型船舶
2時間限定沿海
小型船舶
沿岸
(距岸5海里)
小型船舶
船体構造について
 ○水密甲板の設置 全通甲板
(コックピット構造可)
船首暴露甲板
又は不沈性
船首暴露甲板
又は不沈性
 ○コーミング高さ 15mm以上
(軽減措置有)
75mm以上
(軽減措置有)
75mm以上
(軽減措置有)
 ○水密隔壁の設置 船首及び機関室前端に要 不要 不要
 ○最強速力 6ノット以上 区域に相当する速力 5ノット以上
復原力の確認について 簡易式にて定員計算
(一部の船舶を除く。)
簡易式にて定員計算 簡易式にて定員計算
設備の設置について
救命設備 救命いかだ又は救命浮器 定員の100%要 定員の100%要1 -
救命浮環又は救命浮輸 2個 1個 1個
信号紅炎 一般船舶用を1個 小型船舶用を2個2
(一般船舶用2個でも可)
小型船舶用を2個
(一般船舶用2個でも可)
小型船舶用自己点火灯 1個 - -
小型船舶用自己発煙信号 1個 - -
小型船舶用火せん 2個 - 2個3
発煙浮信号 1個 - -
小型船舶用EPIRB 1個
(長さ12m未満は不要)
- -
小型船舶用SART 1個
(長さ12m未満は不要)
- -
持運び式双方向無線電話 1個(長さ12m未満又は国際航海に従事しない場合は不要) - -
無線設備 無線電信又は無線電話 1個(長さ12m未満は不要) - -
消防設備 小型船舶用粉末消火器
又は
小型船舶用液体消火器
・内燃機関は3個
・船外機は2個
・内燃機関は2個
・船外機は1個
(消火用バケツ有は1個減)
・内燃機関は2個
・船外機は1個
(消火用バケツ有は1個減)
排水設備 ビルジポンプ 1台 - -
バケツ及びあかくみ - 各1個 各1個
航海用具 双眼鏡 1個 - 1個
ラジオ 1台 - 1台3
コンパス 1個 - 1個4
航海灯 1式 1式5 1式5
国際信号旗 NC旗 - -
海図 1式 - 1式6
(平成16年10月28日現在)
1 総トン数5トン以上の船舶で、5海里以遠を航行する無線設備を有しない船舶に限る。
2 「漁業無線」、「マリンVHF(16ch付)」、「国際VHF」、「サテライトマリンホン」、「インマルサットミニM」、「EPIRB」、「SART」、「持運び式双方向無線電話」を備える揚合は不要。
3 「漁業無線」、「国際VHF」、「サテライトマリンホン」、「インマルサットミニM」、「EPIRB」を設置する場合は不要。なお、「携帯電話(一部を除く。)」を設置する場合は、小型船舶用火せん1個を省略して差し支えない(ラジオは要)。
4 自船の位置及び進行方向が表示できるGPSを設置する場合は不要。
5 夜間航行をしない船舶は不要。
6 (財)日本水路協会発行の「ヨット・モータボート用参考図」及び「プレジャーボート・小型船用港湾案内」並びにヤマハ中国(株)発行の「クルージングマップ」でも差し支えない。また、GPSにより、海上保安庁刊行の電子海図(ENC)を表示できる場合は不要。


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