日本財団 図書館


表3-1 救命艇の事故例(No.1)
船舶 KAYAX、パナマ船籍バルクキャリアー
場所、年月 オーストラリア、ビクトリア、1994年
出典 Safety at Sea 1996/4
概要  PSC検査時に、検査官指示により左舷救命艇をデッキ上まで降下させた後、格納位置にもどす。その後、その位置で機関を始動し、前後進させるとの指示に従い機関を始動したが、その後救命艇は水面まで約20m落下し、乗艇していた4名は負傷(内1名は重傷)。
 原因は、前後進レバーがわからず、誤って、離脱レバーを引いてしまったため(安全ピンが正常に取り付けられていなかった)。
 船員は、韓国、インドネシア及び中国人であり、日本語及び英語で書かれていた操作説明が読めなかった。
 
表3-2 救命艇の事故例(No.2)
船舶 Pride of Hampshire、RORO旅客船
場所、年月 Cherbourg、1994年9月
出典 Safety at sea, 1997/3
概要  救命艇訓練時に落下、乗艇者32名中8人が水面に振り落とされる。16名が負傷。
 原因は、離脱フックに結合されたサスペンションリンクの錆びによる破壊。ダビットを調査後、溶接部の劣化が見られた。
 
表3-3 救命艇の事故例(No.3)
船舶 HOUGH DUKE
場所、年月 スラバヤ、インドネシア
出典 Safety at sea, 1997/7
概要  右舷救命艇の訓練で降下中に後部フックが外れ、前部フックによりつり下がった後、逆さまで海面に落下した。乗艇者12名中、6名が死亡、他の6名は負傷した。
 原因は、連絡ケーブルの錆びにより操作機構が固くなり、完全にリセットされていなかったため。
 (フックメーカーは、英国、マンチェスター)
 
表3-4 救命艇の事故例(No.4)
船舶 Cape Kestrel、パナマ船籍、バルクキャリアー
場所、年月 Dampier、西オーストラリア、2001年10月
出典 Safety at sea, 2002/10
概要  左舷救命艇訓練時、航海士と船員計4名乗艇して水面まで降下。フックを連結して引き上げ時にホイストスイッチが作動せず、別の場所にある電源盤のスイッチを押して巻き上げる。そこからは救命艇が見えず、騒音のため連絡できず、リミットスイッチを越えて巻き上げたため、吊り索が切断され救命艇は水面に落下。航海士は重体、その他も負傷。
 
表3-5 救命艇の事故例(No.5)
船舶 mv Galateia、バハマ船籍、バルクキャリアー
場所、年月 リバプール、2002年1月
出典 UK DOT News release 032, 2002/7/25
概要  3名乗艇の左舷救命艇が進水、離脱した後、吊り索に連結し巻き上げられる。ダビットに格納中、離脱レバーを格納状態にもどした時、フックが開き、高さ19mより水面に落下。一人重傷を負う。
 原因は、船員がマニュアルを読まず、構造を理解しないままで、ロッキングピンがセットされていなかったため。
 
表3-6 救命艇の事故例(No.6)
船舶 Alianthos、マルタ船籍、バルクキャリアー
場所、年月 Geelong、2001年1月
出典 ASTB report 164
概要  救命艇訓練時、左舷救命艇の進水、回収が行われた後、他の船員に説明するため、無人の状態でデッキまで降下作業を実施。ブレーキ操作が急激であったため停止するよう指示され停止したが、ダビット振り出しの衝撃と重なり艇が暴れて、後部フックが外れる。その後、ダビットアームの折れ曲がりと共に前部フックも外れて艇は落下した。
 原因は、連絡ケーブルの調整不良、フットプレートのゆるみによる遊びの増加等で、フックが完全にリセットされないままであったこと。ケーブルは使用に伴い、動きが重くなるため定期的な交換が望ましいが、12年間交換された記録はない。
 
表3-7 救命艇の事故例(No.7)
船舶 Washington Trader、フィリピン船籍バルクキャリアー
場所、年月 クイーンズランド、2000年8月
出典 ASTB report 160
概要  7週間前の前回訓練時に救命艇の降下進水、回収を実施していたため、今回は無人でデッキまでの降下訓練を行うこととした。右舷の艇が降下された後、左舷の艇を降下中何かに引っ掛かり、艇が傾くと共に後部フックが外れる。その結果、前部フックから吊り下げられた状態で暴れ、前部フックが開放して水面に落下した。
 艇が傾いた原因は不明(多分グライプに引っ掛かった)であるが、そのため、後部フックのリンクストッパーを破り、リンクが外れた。前部フックが開放した原因は、連絡ケーブルの動きが堅く、完全にリセットされなかったためと推定される。
 フックのリセット状況及び着水を示す赤、緑のランプ表示の意味がわかりにくいとの指摘がなされている。
 
表3-8 救命艇の事故例(No.8)
船舶 PAC MONARCH
場所、年月 カナダ、バンクーバー、2000年10/26
出典 DE47/5
概要  クルー4名が乗艇して進水降下中、ダビットアームがサポートブロックまで振り出した時、後部フックが外れて中吊りになり、その後、前部フックも外れ、船尾を下にして15mの高さから水面に落下した。4名中3名が亡くなる。1名は軽傷。
 
表3-9 救命艇の事故例(No.9)
船舶 Ma Cho香港船籍バルクキャリアー
場所、年月 タスマニア、ダベンポート、2002年
出典 ATSB, Maine safety investigation No.188
概要  2002年12月9日、退船訓練の一環として右舷の救命艇進水作業が計画された。乗組員が乗艇し、シートベルトを締めた。デッキからのブレーキ操作により進水が行われたが、アームの振り出し後、ダビットヘッドより約2m降下した時点で、後部フックが開放し前部フックで中吊りになった。乗組員を救出したのち、救命艇を着水させ、フックの調査が行われた。
 原因は後部フックに繋がる作動ワイヤーの固定部が改造されていたため、固定位置がずれ、正しいリセット位置までもどらないためであった。本船の安全管理、離脱装置の整備及び乗組員の訓練が不十分であるとされた。
 
表3-10 救命艇の事故例(No.10)
船舶 Port Arthur 貨物船
場所、年月 Port Botany、NSW 2003年10月
出典 ATSB, Maine safety investigation No.198
概要  船級の検査時に、4名の乗組員が乗艇して右舷救命艇の進水が行われた。
 海面から約10mの高さを降下中に船首フックが外れ、その後すぐに船尾フックも外れたため、船首から垂直に落下した。着水の衝撃でシートベルトが切れ乗組員は負傷した。
 原因は、フック内部の錆、ゴミ等のため、正常にリセットできなかったこと。フックストッパー及びロッキングピースの位置関係を目視で確認できる点検孔がなかったこと。フックは11年間整備されていなかった。また、乗組員はフックの作動機構を正しく理解していなかったようである。
 
表3-11 救命艇の事故例(No.11)
船舶 オイルリグ
場所、年月 米国海域、2004年
出典 DE48/5/8
概要  承認試験の準備で救命艇を海面から揚収している際に、高さ約20m吊り上げた状態で船尾フックが外れ、そのまま船首フックも外れて海面にキャノピーから落下した。1名が死亡、2名が重傷を負った。
 離脱フックを調査した所、フックを固定する内部カムが正しいリセット位置になくても、操作ハンドルがもどせてしまう構造であることがわかり、その不完全なリセット状態で、フックはある程度の力までは開放されない危険な状態になる。また、このフックにはリセット状態を確認する点検孔があるが、内部機構を理解した人でないと、リセット状態の確認は困難。
 米国は同paperで、この種の不完全なリセット状態でも操作ハンドルがもどせてしまうフックを排除するため、LSAコードの改正を提案。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION