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平成16年度海上におけるセキュリティ対策調査研究報告書

 事業名 海上におけるセキュリティ対策の調査研究
 団体名 海上保安協会 注目度注目度5


III 調査研究成果
1 有効なテロ未然防止策
 本委員会では、船舶に対する脅威を類型化し、その中でテロリズムに関する脅威に焦点を絞り、具体的なシナリオを想定した上で、これを分析してきた。
 現在、9・11米国同時多発テロ発生以降も引続き、政府のテロ対策は重点的に行なわれており、また、民側の自主警備も平成16年7月1日に施行された国際船舶・港湾保安法を契機として一段と強化されている状況にある。
 このような中、前章までの検討を踏まえ、平時のテロ未然防止から有事の際のテロ対処まで、官民それぞれのセキュリティ対策に間隙を作ることなく相互に緊密な連携を図り、そして、互いのセキュリティ対策を一層効果的かつ有効ならしめるための方策例を提言するならば、次のような方策が有効であると考えることができる。
 
(1)[情報収集・分析体制の強化]
 テロ対策に当たっては、テロリストの実態とその活動状況などのいわゆるテロ情勢を正確に把握するとともに、具体的なテロに係る情報やテロの蓋然性を推測するための分析等が重要となる。
 本来であればこれらを一元管理する国家レベルの組織の設置が望ましいが、直ちに現状での実現は困難であると思料される。
 このため、当面は港湾保安委員会等の現有・既存の枠組みを活用し、即時かつ効率的にテロ関連の情報等を共有し、官民相互の立場から多角的な検討を図っていく必要がある。
 
(2)[船舶保安関係職員等、事業者職員のセキュリティに係る知識の向上]
 船舶保安管理者や船舶保安統括者に対する教育は、昨年7月に施行された国際船舶・港湾保安法により、保安講習が義務付けられたことを契機として効果的に実施されており、船舶保安職員関係者等は一定の知識を保有しているものと思料される。
 しかしながら、これらに加えて、テロ情勢の最新の動向や最新のセキュリティ対策の取組み等について継続的にその情報やノウハウを入手することは、以後のセキュリティ対策の策定・実施にとって極めて効果的であると思料される。
 このため、テロ情勢やテロ事例及び世界のセキュリティ対策の現状等について時宜を得た報告・検討会の場が官側から提供でき得る体制について構築していく必要がある。
 
(3)[保安訓練・操練等の効果的な実施]
 船社や船舶乗員等による各種保安訓練や操練等については、船舶保安規定等により定期的な計画の策定・実施が取り決められており、当該訓練等の実施は職員のセキュリティ対策に係る意識・練度及び知識の向上に極めて有効であるものと思料される。
 これらの訓練や操練の適切な実施は、船内外の巡視・警戒等といった平時のテロ未然防止対策はもとより、有事、すなわち、実際に現場で不審事象が発生した場合、さらには、まさに発生しようとしている場合においても、職員が迅速かつ的確に対処するために必須のものであると思料される。このため、保安訓練や操練等について一層効果的かつ実践的に実施していくための海上保安庁等の治安機関が有する訓練ノウハウ等の供与等、官が協力していく必要がある。
 
(4)[通常時の対応(平時の保安措置)]
 平時の対応については、船舶保安規定に基づく保安措置により、相当の対応が可能であると考えられるが、今後のテロ情勢の変化等に的確に対応していくため、当該措置の有効性等に対し常に検証を進めていく必要がある。
 このため、官民が常に緊密な連携を図りつつ、互いが実施しているセキュリティ対策を十分に認識・把握しつつ、常に脆弱箇所等の検証・点検に努めていく必要がある。
 
(5)[事案発生時の対応(初動措置、被害拡大防止措置)]
 有事(事案発生時)の対応についても(4)と同様、船舶保安規定に基づく対応措置により、相当の対応が可能であると考えられ、また、その対応の大部分が官側によることとなるが、今後のテロ情勢の変化等に的確に対応していくため、当該措置の有効性等に対し常に検証を進めていく必要がある。
 このため、官民が常に緊密な連携を図りつつ、互いが実施しているセキュリティ対策を十分に認識・把握しつつ、常に脆弱箇所等の検証・点検に努めていく必要がある。
 
(6)[抑止効果(プレゼンス)]
 テロを未然に防止するためには、高いセキュリティポリシーのもと、的確なセキュリティ対策を確実に講じている、という姿勢を必要に応じて積極的に外部に示し、テロの標的とならないようアピールすることも重要である。
 このため、白己のテロ未然防止に係る取組みを、適時な機会を捉えメディア等を通じて広く広報(PR)し、当該プレゼンス効果によるテロの抑止効果を狙う必要がある
 
2 具体的な官民の連携のあり方
 1で提示した、テロ未然防止策を実現していくための、官民の連携のあり方について具体的な方策は、以下のとおりである。
 
(1)[情報収集・分析体制の強化]
イ 既存の枠組み(港湾保安委員会、海上防犯連絡員、海守等)を活用した情報の収集・共有の強化
ロ 関係機関、事業者間における情報担当窓口の設定及び連絡系統の整備
ハ 情報連絡会等、官民の情報共有が図れる場の設定及び定期的な開催
 
(2)[船舶保安関係職員等、事業者職員のセキュリティに係る知識の向上]
イ 官側のノウハウを共有できるような機会(研修会等)の設定
ロ 最新のテロ動静やセキュリティ対策関連の参考情報等の質料を、船舶保安職員等に配布
 
(3)[保安訓練・操練等の効果的な実施]
イ 船社や各船がより効果的かつ実践的な訓練及び操練が実施できるよう各種訓練(不審物検索、不法侵入者の捜索等)のフォーマットを官側で作成し、関係者に配布。
ロ 官側のノウハウを共有できるような機会(研修会等)の設定
ハ 必要に応じ官民合同訓練の実施
 
(4)[通常時の対応(平時の保安措置)]
イ 官民がそれぞれ実施している各種対策、措置等に係るノウハウを共有できるような機会(研修会等)の設定
ロ 合同机上訓練や検討会等の開催
ハ 各種事案対応マニュアル等の共同作成
 
(5)[事案発生時の対応(初動措置、被害拡大防止措置)]
イ 官民がそれぞれ実施している各種対策、措置等に係るノウハウを共有できるような機会(研修会等)の設定
ロ 合同机上訓練や実働訓練の開催
ハ 各種事案対応マニュアル等の共同作成
 
(6)[抑止効果(プレゼンス)]
イ 上記取組みの効果的な広報
ロ 訓練のデモンストレーション
ハ パトロールの実施
ニ 講演会・イベント等の開催による啓蒙
 
3 おわりに
 以上1、2で示したような、有効なテロ未然防止策、またその実現のための官民の連携のあり方についての具体的な方策は、いずれも必要かつ重要な施策であると考えられることから、それぞれが近い将来に実現することが極めて望ましい。
 しかしながら、官庁サイドにあっては予算や必要人員の確保等のハードルがあり、また民間サイドにあっては新たなコスト負担等のハードルがあるという現実が存在する。
 このため、関係者にあっては、各施策の実現に向けた努力を行っていただくのはもちろんであるが、実現に向けての障害や問題がある場合においては、当該障害や問題がどのようなものであるかを正しく把握し、それを除去ないし解決するためにはどのような手段が必要であるかを認識した上で、官民挙げて障害の除去や問題の解決に当たることも必要であると考えられる。
 一方で、官民連携による情報共有や連絡体制の整備、合同訓練の開催といった、大きなコスト負担を必要とせずすぐにでも実行に移すことのできる施策もある。こういった施策については、早急に実施に移すことを検討する必要がある。
 いずれにせよ、海上テロ対策というテーマは今日に至るまで専門的な考察があまりなされていなかったという現状において、本研究の検討結果はその現状に対する一つの問題提起としての意味があるものと言える。
 本委員会では、海上テロにおける最もベーシックな検討対象として我が国領海内における日本船籍船舶に対するテロに焦点を絞り検討を進めた訳であるが、便宜置籍船等に対する対策や船舶が出入する港湾とのセキュリティ対策に関する整合・接続性(いわゆる「船舶と港湾のインターフェース」)等についても今後、具体的な検討が必要であると考えられる。
 また、テロに対する取組みを考える上では、国際的な協調体制の下、世界的な枠組みでセキュリティ対策が推進される必要があることは論を待たないところであり、今後さらなる海上セキュリティ対策についての議論が深められることを期待するものである。


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