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(3)テロに用いられる危険物等
 船舶に対する具体的なテロのシナリオを想定する前に、過去のテロ事例等で使用された、又は今後使用される可能性の高い危険物等について参照することとした。これにより、シナリオの想定・検討がより現実的かつ実用的なものになることが期待される。
 次に記載するものがその代表的なものである。
【爆発物】
 船舶へのテロを考えた場合、最も脅威となるのは爆発物である。テロで使用される爆発物には、一般に流通している材料から作成する「私製爆発物」と軍隊や警察が専用に使用する「軍用爆発物」とに大別できる。
 日本国内では爆発物の所持は法律で厳しく規制されており、民間人が軍用爆発物を入手することは極めて困難であるため、花火の火薬を使用したり、化学薬品等を混ぜ合わせる等により私製爆発物を作成したりする例がほとんどである。
 これらの爆発物は、過去、中核派や核マル派等の極左暴力集団が多く使用した実績があるが、近年ではインターネット等を利用してマニアや学生等が私製爆発物を作成した事例も認められる。
 
<私製爆発物>
<酒瓶とオイル缶による火炎爆弾>
 
<スーツケース爆弾(鉄パイプ爆弾内蔵)>
 
 
【銃器】
 テロリストは武装しているのが常であり、特に銃器による武装が行われていることは間違いないが、けん銃から自動小銃までその種類は多岐に及ぶ。
 船舶運航支配型のテロの場合、事前に対戦車ロケット砲等の大型の武器を持ち込むことは、特に警備が厳格な日本国籍船舶の場合、レアケースであると考えられるため、むしろけん銃程度の銃器が犯行に使用される可能性が高い。
 
<けん銃(写真上)と自動小銃(写真下)>
 
【その他の危険物】
 炭疽菌や天然痘ウイルスのような生物剤、サリン等の化学剤を使用したテロについては、我が国においても地下鉄サリン事件のような発生事例があることはまだ記憶に新しく、今後の発生の可能性を否定することはできない。
 化学剤や生物剤は、核兵器と比較し容易かつ廉価に製造が可能であるため、「貧乏人の核」と言われ、従前よりテロリストによる使用が懸念されている。
 船舶に対するテロにおいて化学剤や生物剤が使用される可能性については、現時点では高いとも低いとも予測できないが、これら化学剤や生物剤のテロ行為における特性(メリット)が不特定多数の人間を広範囲に殺傷することが可能であること及びこれにより極めて高い恐怖感を人々に扶植することが可能であることから、狭く限定された空間で、かつ、洋上に存在する船舶よりは陸上の多衆集合施設等において使用される可能性が高いと考えることができるものの、船舶に対しても大きな脅威である。


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