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III 参考資料
[未定稿]
[アメリカの地方税制度]
I アメリカの概要
・政治形態:連邦制(大統領制)
・人口  :2億8,142万人(2000年)
・面積  :962.8万Km2(日本の約25倍)
 
II 地方自治体の概要
2002年現在
・カウンティ(County):郡、州の第一の政治的行政区画であるが、州によっては郡が管轄していない区域もある。
・ミュニシパリティ(Municipality):市町村、一定の地域における特定の集中した人口に対して、一般的な地方政府のサービスを提供する為に、地方自治権のある法人が設置された政治的な一区域である。
・タウン・タウンシップ(Town・Township):ニューイングランド地方では、歴史的に広域的なカウンティが創設されることがなく、タウンが発展した。また、タウンとカウンティの中間的な地方政府であるタウンシップも形成された。
・特別区:消防・都市下水、排水、墓地、公園などの特定の目的を実現するために設立された独立の法人
・学校区:公立学校の教育の実施は州によってことなり、郡、市町村が行っている場合もある。
 
・州と連邦政府の関係
 州は連邦憲法の改正権を有する連邦の構成員として、連邦と州の二重主権の下にあり、州政府の課税権は州政府に保留されている。連邦政府が課税するためには連邦憲法の規定又は連邦裁判所の憲法規定解釈によらなければならないが、現行の連邦憲法は、州政府に対して、次の制約を課している。
(1)輸出入税の禁止(2)正当な法の手続き(3)通商条項による制約
・州と地方政府の関係
 アメリカの地方政府は、建国以来の伝統的な自治の精神にもとづく住民自治の成果として、構成人口、設置目的、政治的性格、行政的権限、財政規模など、多様性に富んでいる。
 その為、州と地方政府の関係も複雑であるが、1886年の「地方自治法人は、その起源も、その権限及び権利も、州議会に負い、そこに由来する」とのディロン原則に言い表されるように、地方政府は「州の創造物」であるとされ、憲法上の規定がない場合には地方政府は州の統制に服さなければならず、また、州憲法、法律による授権がない限り、地方政府は税等を徴収することができない。
 
III 地方自治体の所掌事務
・州:住民に対する基本的な行政責任は州が有するとされる。
・地方政府:各州の憲法、法律は各地方政府の形態を規定しているが、具体的にそれぞれの地方政府の行う事務内容、権能等についての定めはほとんどなく、それぞれの地方政府が決定する仕組みとなっている。一般的な所掌事務は、以下のとおり。
カウンティ:公共の安全と秩序の維持、司法機関、一般福祉、道路、農業援助、教育、保健、公園、レクリエーション施設、図書館、ゾーニング等
ミュニシパリティ:上・下水道、保健衛生、道路、警察、消防、教育、福祉、都市計画、レクリエーション、市営企業、交通
特別区:港湾、下水処理、上水道、公園、橋、トンネル、住宅、空港、図書館等
・カウンティは、州法などに規定された業務を行い、さらに州内にミュニシパリティが存在しない地域の一般行政事務を行う。
 
IV 地方財政の状況
 州政府の歳入構成は、州税が49%を占め、次いで政府間歳入が31%となっており、政府間歳入は増加傾向にある。一方、地方政府の歳入構成は、政府間蔵入が37%を占め、次いで地方税が34%となっている。
 州政府の政府間歳入は、連邦政府からが95%近くを占め、地方政府の政府間歳入は、90%近くが州政府からとなっている。
 歳出については、州政府・地方政府の歳出規模の比率は、ほぼ1:1であり、その構成は、政府間歳出を除くと、教育や公共福祉・病院等の歳出が多くなっている。
 
州政府の歳入構成(2000)
 
地方政府の歳入構成(2002)
 
州政府の歳出構成(2002)
 
地方政府の歳出構成(2002)
(出典)State and Local Government Finances 2001-2002 米国商務省センサス局ホームページ
 
 全税収に占める国税と地方税の割合は、日本とほぼ同割合となっている。
 また、国民負担率もほぼ同じであるが、日本に比べ、租税負担率が大きくなっている。
 
国民負担率の比較(国+地方)
(国民所得比)
(出典)「Revenue Statistics」「National Accounts」(OECD)
 
国税・州税・地方税の税収割合
(出典)「Revenue Statistics」(OECD)
 
V 地方税制
1. 概要
 州政府の税収の内訳は、財産税(1.8%)、個人所得税(34.7%)、法人所得税(4.7%)、小売売上税(33.6%)、個別間接税(15.5%)、免許税(6.6%)となっており、小売売上税及び個人所得税が主な税収源となっている。ただし、州により特色があり、小売売上税を課税していない州も存在する。
 地方政府の税収の内訳は、財産税(72.9%)、個人所得税(4.6%)、法人所得税(0.8%)、小売売上税(11.7%)、個別間接税(5.0%)となっており、財産税が主な収入源となっている。
 
州政府の税収構成(2002)
 
地方政府の税収構成(2002)
(出典)State and Local Government Finances 2001-2002 米国商務省センサス局ホームページ
 
2. 課税権
 州政府は、連邦憲法の特別規定による制約を除き、固有の完全な課税権を有しており、連邦・州間では税目の重複が見られる。一方、地方政府は、州から課税権を委譲される形をとり、通常、州が税目を設定し、税率については、一定の制限の範囲で地方政府に自由度が認められている例が多い。
 
3. 主な税目
・個人所得税:43州が課税しており、一部地方政府でも課税されている。
また、税率等が州毎に異なっている。
・法人所得税:46州が課税しており、一部地方政府でも課税されている。
また、個人所得税と同様に、税率等が州毎に異なっている。
・小売売上税:連邦では、小売売上税を課税しておらず、45州及び一部の地方政府によって課税されている。対象となる売上げは主として有形動産の移転・交換、貸借やサービスの対価などであるが、動産の範囲、非課税項目など州毎に異なっている。
・財産税:州法による授権により、地方政府で課税される。州政府でも課税されているが、金額は多くない。不動産については、全州で課税対象とされているが、その他の課税対象は州によって異なり、流動資産や無体資産も課税対象となっている場合もある。
 
VI 財政調整制度
 アメリカの補助制度には、日本の一般交付金制度にあたるような仕組みは存在せず、その使途を特定目的に限定した補助金がほとんどを占めており、州間の財政力を調整する仕組みは無い。
 かつては、一定の連邦財源を州・地方政府に対し、一定の配分公式により交付するGRS(一般歳入分与)という制度があったが、1986年に廃止されている。
 この制度は、州・地方政府の財政力平衡化を目指すもので、その使途は「治安・環境・交通・保健・レクリエーション・図書館・福祉・財務行政」の8分野であれば基本的には州・地方政府の裁量に委ねられていた。
 
(参考文献)
「米国の地方財政」 山崎正
「主要国の地方税財政制度」 財務省財務総合政策研究所
「地方財政システムの国際比較」 財務省財務総合政策研究所


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