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VI-3 計算条件の検討
 計算条件の検討に当たっては、実海域における流出油防除実験を想定して、対象海域を八丈島沖の黒潮の外側(北緯32°30′、東経140°30′)、対象時期を9月下旬として、計算に必要な気温、水温、風向・風速、海流条件、流出油種を設定した。
 
1 気温
 地上気象官署(八丈島)における過去10年(1995年〜2004年)の9月の平均気温を表VI-3.1に示す。
 対象海域の気温を過去10年の平均値である25.2度に設定した。
 
表VI-3.1 八丈島の9月平均気温(1995年〜2004年)
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
気温
24.8
24.2
25.3
25.6
26.7
25.4
23.9
25.0
25.3
25.3
 
2 水温
 国内外の海洋調査機関によって取得された海洋データや海洋調査等に係る情報データベース(J-DOSS: JODC Data On-line Service System)の水温統計から、対象海域周辺の水温を調査したところ、27.72度であった。(図VI-3.1参照)
 よって、対象海域の水温を27.7度に設定した。
 
図VI-3.1 対象海域周辺の9月平均水温図
 
 
3 風向・風速
 地上気象官署(八丈島)における過去10年(1995年〜2004年)の9月の平均風速を表VI-3.2に示す。平均風速は5.0m/sであり、東北東の風向が卓越していることがわかった。海上風は地上気象官署における観測値に比べて大きいことから、風速を7.0m/s、風向を東北東に設定した。
 
表VI-3.2
八丈島の9月平均風速・最多風向
(1995年〜2004年)
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
風速
5.6
5.6
5.0
5.2
4.5
4.3
5.8
4.9
5.2
4.0
風向
西
東北東
東北東
東北東
東北東
東北東
東北東
東北東
北東
南西
 
4 海流
 J-DOSSの海流統計から、対象海域周辺の海流を調べたところ、平均流速0.5ノット、平均流向108度であった。(図VI-3.2参照)
 108度は、16方位に換算すると東南東の流れとなる。
 海流として東南東0.5ノットを設定した。
 
図VI-3.2 対象海域周辺の9月海流統計図
 
 
5 流出油種
 流出油種としては、我が国に輸入されている原油のうち、15年度に最も輸入量が多かったサウジアラビア産のアラビアン・エキストラ・ライトを採用した。
 15年度の原油油種別輸入量上位10位を表VI-3.3に示す。
 
表VI-3.3 15年度原油油種別輸入
順位 油種 輸入量(KL) 原産国
1
アラビアン・エキストラ・ライト
29,013,958
サウジアラビア
2
マーバン
28,189,714
アラブ首長国連邦
3
クエート
18,202,197
クエート
4
アラビアン・ライト
14,334,841
サウジアラビア
5
フローザン・ブレンド
12,509,020
イラン
6
イラニアン・ヘビー
11,565,517
イラン
7
カタール(ドハン)
10,268,214
カタール
8
イラニアン・ライト
9,950,055
イラン
9
アッパー・ザクム
9,940,601
アラブ首長国連邦
10
ザクム
9,873,419
アラブ首長国連邦
出典 石油連盟ホームページ 統計資料リストより抜粋
 
 流出油防除訓練用シミュレータでは、流出油を8つのグループに分類し、炭素に注目した組成比と最大含水率によって性状変化を決定するパラメータとしている。アラビアン・エキストラ・ライトは、低流動点・超軽質のグループに属する。流出油の組成比設定を表VI-3.4に示す。また、最大含水率として60%を設定した。
 
表VI-3.4
流出油(アラビアン・エキストラ・ライト)の組成比設定
成分 沸点範囲(℃) 組成比
C1〜C5(アルカン)
<65
7.36%
C6〜C13(アルカン)
65〜250
34.25%
C14〜C23(アルカン)
250〜350
17.32%
C6〜C11(アロマ)
65〜250
6.28%
C12〜C18(アロマ)
250〜350
4.88%
その他
>350
29.91%


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