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3.2 離岸流等の観測手法及び特性把握(モデル海岸II)
3.2.1 本研究の目的
 本研究では、(i)自然海岸および海岸保全構造物の設置してある人工海岸に来襲する様々な波浪条件に応じて発生する離岸流を長期観測し、その特性を明らかにすること、(ii)数値計算プログラムを開発し離岸流特性を数値シミュレーションにより検討することを目的とする。計測器による長期観測箇所としては、宮崎市青島海岸、鹿児島県志布志町押切海岸、鹿児島県東串良町柏原海岸を対象にした。短期観測については、HGPSによる汀線測量およびフロート観測、そして、染料観測などを、上記海岸以外に鹿児島県吹上町入来浜海岸でも行った。また、離岸流特性を把握する上で海域利用者の情報を得ることが重要である。そのために、主に、学生や、技術者、救難関係者などを対象としたアンケートを実施し、その結果についてもまとめることにした。加えて、一般的な離岸流特性を把握し、結果をより多くの海岸に適用する上で、海岸地形(性状)の類型化を行うことが必要である。そこで、海岸地形(縦断面形状)の類型化に関しては、できるだけ代表的な海岸地形を数学的に表記できる数学モデルの開発を行い、今年度後半に行う数値計算に利用することにした。さらに、試験的な取り組みとして、(1)現場海岸での啓発教育、(2)海浜事故調査も行うことにした。なお、現地観測では、(1)離岸流の発生条件、流況パターン等の確認、(2)地形・波・流れの相互干渉解明、(3)離岸流探査手法としての熱赤外画像観測の有効性確認を主なねらいとしている。そのために、Wave Hunter、ADCP、GPSフロート、熱赤外線カメラなどの機材を使用する。
 
3.2.2 現地観測
 現地観測は、計測器を2週間から6週間ほど海底面に設置して波浪と流れの計測を常時行う長期観測と、フロートや染料などを用いて1日程度で終わる短期観測の2種類を行うことにする。長期観測に関しては、志布志押切海岸で8月1日から9月上旬まで、志布志柏原海岸で8月1日から9月上旬まで、宮崎市青島海岸では8月2日から約2週間を目途に計測を行うことにした。
 長期観測で使用した海象計は、WAVE HUNTER94 WH-101、Wave Hunter99ΣWH-203、長音波ドップラー流速計ADCP(Aquadopp Profiler)である。また、短期観測時の流れ観測にはHGPSフロートと染料を用いることにする。加えて、昨年度の観測で赤外線カメラを用いて岸流探査が行える可能性が指摘されたので、第十管区海上保安本部所有の熱赤外線カメラを用いた観測も行った。
 
図3.2.1 志布志湾内柏原海岸の観測地の様子   図3.2.2 志布志湾内押切海岸の観測地の様子
 
図3.2.3 宮崎市青島海岸の観測地の様子
 
3.2.3 観測結果
(1)青島海岸
 平成15年度と同様に、青島海岸の北側海浜において波・流れ・地形の観測を行った。図3.2.4に調査海域の深浅測量結果を示す。
 
図3.2.4 宮崎市青島海岸の深浅測量結果
 
 深浅図より、離岸距離座標-4000m、沿岸距離座標-1600m〜-600mあたりの領域では、弧状沿岸砂州を含む三次元性変動を含む海底地形が浅海域にあることが分かる。これらの沿岸砂州からより浅い領域の深浅測量が可能であれば、正確に離岸流の発生箇所を推定することが可能である。本深浅図からは、赤線で示す領域で地形性の離岸流が発生する可能性が高いことが分かる。そこで、今年度は主にこの領域を対象に現地観測を行う。なお、波高計・流速計の機能を持つWave Hunterの設置に関しては、観測期間中に台風に伴う高波浪で埋没あるいは流出する可能性があることや、回収時のリスクも低減するために、平成15年度よりも浅瀬に設置した。ただし、満潮時に計測器が干出すると流れの計測が不可能となるので、干潮時に本体が完全に露出する程度の水深に設置する。
 深浅図に示された離岸流発生域としての可能性が高い箇所の極浅海域(水深2-3m以下)の、測量船による測深作業は、当日の波浪条件により困難であった。そこで、より強い離岸流域と若干弱いと思われる離岸流域をカバーするように約50m間隔で8測線設置し、干潮時に沿岸方向約350m区間で水準測量を行った。また、波高計設置箇所の上にも岸沖の測線を設定し、水準測量を行った。その結果を、図3.2.5から図3.2.7に、立体図、深浅図、縦断形状図として示す。立体図および深浅図ともに左側(北側;測線1)と右側(南側)が中央部に比べて海底面が低く、リップチャンネルと思われる地形になっている。また、縦断図からも、左側(北側)の方が、規模の大きいリップチャンネルになっている事がわかる。
 
図3.2.5 極浅海域の立体図
 
図3.2.6 極浅海域の深浅図
 
図3.2.7 岸沖の縦断図(水準測量)
 
 離岸流発生箇所と離岸流規模の特定のために、ハンディGPSを組み込んだフロート(HGPS)、染料(ウラニン)、デジタルビデオカメラ、赤外線カメラなどを用いて調査を行った。以下に、HGPSで計測した汀線位置と離岸流規模の代表例を示す。
 
図3.2.8 干潮時汀線とHWLおよび離岸流
 
図3.2.9 干潮時汀線とHWLおよび離岸流(拡大)
 
図3.2.10 緯距・経距から求めた10秒平均流速
 
図3.2.11 時間・移動距離曲線より求めた平均流速


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