日本財団 図書館


(5)ろ過とUVによるオゾン・水酸基生成の複合処理3)
 スウェーデンが開発中で、ろ過後に強いUV照射し、オゾンと水酸基を生成させて水生生物を殺滅するシステム(図3.3.5)であり、自動車運搬船に搭載済みである。
 装置の要点は、次の通りである。
(1)原理:ろ過で大型の水生生物を除去した後に、強いUVを照射して発生するオゾンと水酸基の酸化力で小型の生物及びバクテリアを殺滅する。
(2)水生生物に対する効果(陸上試験・処理直後のデータ):50um以上の動物プランクトン96.2%、10um以上50um未満の植物プランクトン92.6%、従属栄養細菌95.1〜99.9%殺滅。
(3)現時点での処理水量:500m3/h
(3)イニシャルコスト(装置代):2.5〜3億円(500m3/hの場合)
(4)ランニングコスト:使用電力10kW、クリーニング約2万円/年、UVランプ約12万円/年(500m3/hの場合)
 
図3.3.5 ろ過とUVによるオゾン・水酸基生成の複合処理装置(スウェーデン)
 
 
(6)ろ過とParaclean(化学薬品)の複合処理4)
 ドイツが開発中で、ろ過後にParaclean(過酸化水素の製剤)を注入して水生生物を殺滅するシステム(図3.3.6)である。現時点では、陸上試験段階である。
 装置の要点は、次の通りである。
(1)原理:予備ろ過(遠心分離)を経た後に開口径50umのフィルターでろ過して大型の水生生物を除去し、150ppmのParaclean(過酸化水素の製剤)を注入して小型の生物及びバクテリアを殺滅する。
(2)水生生物に対する効果(陸上試験・処理直後のデータ):全ての生物に対してほぼ100%の効果を発揮する。
(3)現時点での処理水量:560m3/h
(4)Paracleanのコスト:25cent/m3
(5)問題点:効果のほとんどは、Paracleanに依存しており、Paracleanの貯蔵タンクを含めるとかなり大型の装置となる。
 
図3.3.6 ろ過とParaclean(化学薬品)の複合処理システムの模式(ドイツ)
 
(7)機械的殺滅法とオゾンによる複合処理
 日本の(社)日本海難防止協会のチームが開発中で、バラストパイプ中に簡単な構造のスリット板2枚を装着した機械的殺滅装置(図3.3.7)に、オゾンを注入し、両者の相乗効果で全ての水生生物を殺滅するシステムである。現時点では、機械的殺滅装置(プロトタイプ)はコンテナ船搭載済みで、オゾンを組み合わせた装置は、現在陸上試験段階である。(国際展示会でのヒヤリング情報)
 装置の要点は、次の通りである。
(1)原理:バラストパイプ中に簡単な構造のスリット板2枚を装着した機械的殺滅装置に、低濃度のオゾンを注入し、両者の相乗効果で全ての水生生物を殺滅するシステム。
(2)水生生物に対する効果:機械的殺滅装置の実船実験では、バクテリア以外の生物に対してほぼ100%の効果を発揮。
(3)現時点での処理水量:100m3/h(プロトタイプ船上実験機)、20m3/h(オゾンを組み合わせた陸上試験機)
 
図3.3.7 北米航路コンテナ船に搭載した機械的殺滅法のプロトタイプ実機(日本)
 
 表3.3.1には、平成15年度バラスト水管理条約に関する調査研究(RR-E101)でとりまとめたバラスト水処理技術の現状に、3.3.1で示した2004年5月開催のシンガポールでの国際展示会での情報を加え、バラスト水処理装置の現状と評価を示した。
 これら処理装置のうち、処理性能基準である条約の規則D-2の基準をクリアーするとしているのは、次の4処理装置である。
(1)物理的処理技術:熱処理
(2)化学的処理技術:Paraclean(過酸化水素製剤)
(3)複合処理技術:ろ過とParaclean(過酸化水素製剤)、スペシャルパイプとオゾン
 また、実船で実験しているのは、次の5処理装置である。
(1)物理的処理技術:熱処理、スペシャルパイプ、
(2)化学的処理技術:塩素注入、アクリルアルデヒド注入
(3)複合処理技術:メカニカル除去(遠心分離、ろ過)とUV or 化学薬品処理
 つまり、これら処理装置が、現時点では水生生物に対する処理効果が高く、実船搭載に向けての現実性の面での適応性が高いと評価される。また、全ての水生生物に対して高い処理効果を得るためには、熱処理かあるいは化学薬品での処理が必要であることが伺える。
 これら処理装置を含め、今後の開発は、前記した型式承認試験(G8)で承認される高い効果と安定した作動、及び活性化物質承認手順(G9)に合格する環境への安全性を目標に行われるべきである。そして、これら目標をクリアーすることを前提に、小型化と低コストがユーザーの選定条件となる。
 
表3.3.1 バラスト水処理方法の現状と評価(1)
(拡大画面:153KB)
2nd International Ballast Water Treatment R & D Symposium MO London 21-23 July 2003のアブストラクトおよび聞き取り内容をベースに作成。
*アブストラクト、聞き取り内容および国内企業の資料から推定して記載。 **: 国内企業の社内資料等より作成。
***2nd International Conference & Exhibition on Ballast Water Management May 2004からの情報で作成
 
表3.3.1 バラスト水処理方法の現状と評価(2)
(拡大画面:169KB)
2nd International Ballast Water Treatment R & D Symposium MO London 21-23 July 2003のアブストラクトおよび聞き取り内容をベースに作成。
*アブストラクト、聞き取り内容および国内企業の資料から推定して記載。 ** : 国内企業の社内資料等より作成。
***2nd International Conference & Exhibition on Ballast Water Management May 2004からの情報で作成







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION