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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/05/15 朝日新聞朝刊
(社説)冷静に解決を探れ 瀋陽総領事館事件
 
瀋陽の日本総領事館の事件で、日中双方の主張が真っ向対立している。
 中国側の発表では、敷地内立ち入りや、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の5人の連行については、副領事の同意を得たという。5人を拘束した警官に対し、副領事は最後に謝意まで表明したとされた。
 外務省が発表した調査結果は「同意」も「謝意」も否定した。事実はひとつのはずなのに、まるで芥川竜之介の小説『薮の中』を思わせる事態である。
 警官が敷地内になだれ込んだ映像を見る限り、日本側の「同意」は考えられまい。だが、外務省の調査結果は、副領事がお辞儀をして「可以(いいです)」と言ったとか「謝謝」と繰り返したという中国側の具体的な説明に比べてあいまいである。
 外務省調査でも、5人が門の外にある武装警察詰め所に連れ込まれるまで、日本側はなすすべがなかったことが分かる。出張中の総領事や北京の日本大使館、東京の外務省に副領事が電話連絡を取って指示を仰いだのは、その後だった。
 「さらなる指示があるまで現状を維持せよ」と言われ、詰め所の入り口で立ちふさがったが、結局は「無理はするな。連行されても仕方ない」と指示を受けて、5人の連行を見送ったという。
 要するに、中国側の不当性についてその場できちんと抗議した形跡がない。中国の言い分には我田引水を感じるものの、中国側だけが不当だとも言い切れない対応のまずさが見て取れる。
 もちろんウィーン条約に反する中国側の行為を認めるわけにはいかないし、5人の原状回復は要求していくべきである。だが、事実関係に灰色の部分がある中で、ひたすら声高に相手の非だけをとがめるのは、いささか感情的に過ぎよう。
 日中両国にはただでさえ摩擦が生じやすい。この事件で必要以上にナショナリズムを刺激し合うのはお互いに好ましくない。ここは冷静に解決を模索すべきである。
 いま一番に考えるべきは、北朝鮮に送還されれば厳しい処分が待っている5人の安全とその行方である。受け入れの意向を示している韓国などに無事渡れるよう意を用いることである。
 第二に、こうした行き違いが二度と起きぬよう、再発防止に向けた措置をとることだ。中国側とは将来に向けて公館警備のあり方やウィーン条約の解釈をめぐる意思確認の作業をすべきだろう。
 外務省調査では、日本側の指揮命令系統の不備など反省点も並んだが、外務省全体に備えがなく、的確な指示を欠いていたことは厳しく反省しなければならない。
 今度のような「駆け込み亡命」は今後も繰り返される可能性がある。外務省調査は門扉が少し開いていたことを「警備実施上の不備」としたが、門を閉ざしておけばよいという問題では毛頭ない。
 
 
 
 
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