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2000/10/12 朝日新聞朝刊
(社説)朱首相と率直に話せ 対中ODA
中国の朱鎔基首相が来日する。大きな懸案がない中で、中国に対する途上国援助(ODA)が話題になりそうだ。
対中ODAは、大平正芳首相時代、改革開放路線に転じた中国の近代化を支援するために始まった。以後、中国経済は年平均一〇%のスピードで成長した。累計で約三兆円にのぼる。「高度成長に日本のODAが果たした役割は大きい」と中国側も認める。
しかし、これからも対中ODAは同じような規模や内容で続けるべきなのか。日本の財政事情も考えれば、外務省が見直しを始めたのは当然だ。森喜朗首相はそれを朱首相にきちんと伝えてもらいたい。
問題は、どんな理念で見直すか、である。それは、来世紀の日中関係をどう築くか、ということと深くかかわっている。
対中ODAの大幅削減を主張する人々は、次のような理由をあげる。
「中国は日本の援助に感謝していない」
「日本の援助で軍備を拡張している」
一昨年十一月、江沢民国家主席が来日した際に発表された共同宣言は、対中ODAについて「中国側は経済協力に感謝の意を表明した」と明記している。国家としては感謝しているというべきだろう。
中国は軍事予算を毎年一割以上増やし続けている。もちろん軍拡はよくないが、実態以上に脅威だ、脅威だと騒ぎたてて援助の大幅カットに結びつけたら、かえって地域の緊張を高めることになりかねない。
ODA全体の見直しの中で対中援助の比重を下げるのはよい。だが、相手の態度が気に入らない、と削減するのは短絡的だ。
発展したといっても中国の一人当たり国民総生産は、日本の約五十分の一に過ぎない。まだ当分、巨大な開発途上国である。
この隣国が発展するかどうかは、日本の将来に大きく影響する。資源、環境問題、市場の大きさや、安全保障の観点からも、中国の混乱は日本にとってマイナスだ。ODA見直しには、この認識が欠かせない。
改善すべき点は多い。これまでは沿海部のインフラ建設に偏っていた。中国が西部開発に乗り出すのに合わせ、重点を内陸に移すべきだ。港湾や鉄道、道路などへの援助から、人材の養成、自然や環境の保護、公害対策などに切り替えることも必要だ。
中国側にも言いたいことがある。
朱首相が認めたように、日本のODAに関する中国国内での宣伝は足りない。知らなければ、人々の心に感謝の念は生まれない。PR強化の約束の実行を見守りたい。
核やミサイル開発などで、中国が軍事的脅威を日本に与えるなら、ODAは出せなくなることもよく認識してほしい。
中国の大衆には、日本の援助は戦争賠償の代わりとの見方があるが、対日賠償請求の放棄と援助は別問題である。もちろん、日本側は中国が賠償請求を放棄した事実を心にとどめておかなければなるまい。
援助には、出す側と受ける側との温かい気持ちの通い合いが大切である。森首相はそのことを朱首相と確認してほしい。
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