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2000/03/01 朝日新聞朝刊
(社説)乱獲から共有の海へ 日中漁業協定
東シナ海の漁場を対象にした、新しい日中漁業協定が署名から二年余りを経て、ようやく六月に発効する見通しになった。
両国が共同で資源管理などをする「暫定水域」の北に位置する水域の操業条件について、合意ができたからだ。
国連海洋法条約に基づいた「二百カイリ時代」の漁業と資源保護のあり方を、沿岸国が共に考え、協力する。その一歩をしるしたものとして評価したい。
日韓の間では、一年前に新しい漁業協定が発効した。仮協定が結ばれた中韓でも、本協定に向けた作業が続いている。
今回の合意を機会に、日中韓三国の漁業関係者は、「乱獲の海」といわれてきた東シナ海について、「共有の海」という認識をさらに深めてもらいたい。
せっかく調印した新協定が発効しないため、日中間では、一九七五年に締結された旧協定が生きてきた。その結果、日本の領海ギリギリまで押し寄せて操業する中国漁船に、日本の漁業団体が反発し、自民党の一部には「現行協定の破棄を通告すべきだ」といった強硬意見も出ていた。
交渉では、相手国の許可なしに操業できる「中間水域」の範囲の線引きや、そこから東西に広がる両国の「排他的経済水域」(EEZ)内で操業する相手の漁船数をどこまで認めるか、が焦点になった。
中国側は当初、四千隻の入漁許可を求めていたが、結局、許可漁船数は九百隻、そのうちある漁期に出漁できる最高の隻数は六百隻ということで妥協した。一方、中国のEEZ内で操業できる日本船は三百十七隻と決まった。
資源保護をめざす海洋法条約の考えに沿って、EEZ内の操業規制をする。乱獲だとして日本側が非難していた「底流し刺し網漁」の禁止を中国がのんだ。これらは、前進といえよう。
しかし、残された課題も少なくない。
日中双方は「中間水域」についても野放図な操業にならないよう、漁船の数を制限することや、この水域の漁獲量のデータを相互に交換することなどで合意した。しかし、具体的な中身を決める話し合いは、まだこれからである。
東シナ海は世界でも有数の漁場とされている。「乱獲の海」を「共有の海」にするには、暫定水域、EEZなどの区別にとらわれずに、操業規制や水産資源調査を進めなければならない。
二百カイリ時代の世界の海は、領海とEEZによって沿岸国の権利が保障された水域が大半を占め、公海は狭まった。そうしたなかで、資源保護という観点に立って、沿岸国が協調する地域漁業機関が各地で設立されている。
基本的には自由に漁獲ができる公海でも、日本を含めた十六カ国は、カナダやグリーンランド沖などを対象に北西大西洋漁業機関(NAFO)をつくり、漁獲量を割り当てていたり、共同で調査や予測にあたったりしている。
魚介類の増殖、放流技術が比較的進んでいる日本は、ホタテガイの増殖やサケ・マス類の放流などで中国に技術協力をしている。中国の研究者が最近、漁業資源の増殖に関する本を台湾で出版し、日本訳がでた。こうした動きは歓迎できる。
協定によって資源管理をめざす日中韓三国には今後、共同で漁業資源の調査や増殖などを行う協力体制づくりを期待したい。
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