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1999/08/04 朝日新聞朝刊
(社説)軍拡の悪循環を断て 中国ミサイル
中国が新型の長距離ミサイルの発射実験に成功した、と発表した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射準備が伝えられるさなかである。
発射されたのは、米国西海岸にも届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風31」と見られ、移動式で、多弾頭化されているという。核弾頭を積むことも可能だ。
昨年夏のクリントン大統領の中国訪問で、米中は互いに戦略核ミサイルの照準を外すことで合意した。
さらに中国は、先月末の東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相級会合で、東南アジア非核地帯条約の議定書に調印する意向を表明し、歓迎されたばかりだ。
今回のミサイル発射実験は、こうした緊張緩和への動きを逆転させかねない。
そればかりではない。米国や旧ソ連とは一線を画して、核軍縮の必要性を説いてきた中国自身の主張を損なうものである。
実験成功を伝える国営新華社電は、わずか二行に過ぎなかった。どのようなミサイルが発射されたのかもわからない。実験の場所も、「国内」というだけで一切明らかにされなかった。
発射されたミサイルの概要などを示せばそれでいい、というわけではない。だが、信頼醸成の見地から、少なくとも、より積極的な情報公開が求められる。
中国外務省は今回の実験を、「国家の主権と領土を守るための国防力の開発」と説明している。
しかし、「主権」や「領土保全」はいつも軍拡の理由にされてきた。
北朝鮮もミサイル開発を「自主権の問題」と主張している。中国の今回の実験が、北朝鮮に開発や実験の正当化の口実を与えることを恐れる。
先月訪中した小渕恵三首相は、李鵬・全人代常務委員長に、テポドン発射に対する日本国民の憂慮を北朝鮮に伝えるよう依頼し、前向きの反応を得ていた。その中国による実験は、残念というしかない。
兵器の開発競争がなにをもたらすかを、冷静に考えなければならない。
米中の保有するICBMを比べると、米国が一九九七年末で五百八十基に対し中国は十七基程度と、圧倒的な格差がある。
そのうえ米国は国防費を今後六年間に千百億ドルも上積みする計画を立てている。
こうした動向に、中国としては恐怖感を抱かざるを得ないのだろう。
イラクやコソボの空爆では、米国のハイテク兵器の威力が示された。飛来するミサイルを撃ち落とす日米共同の戦域ミサイル防衛(TMD)構想にも、中国は警戒感を募らせている。
台湾に軍用機を売却するとの米国の発表に、中国が抗議したその日にミサイル実験が行われた。台湾をめぐる米中の対立も、背景にあることは間違いない。
中国はここ数年、国防予算を増やしてきた。建国五十周年を迎えるこの秋には、十五年ぶりに大規模な軍事パレードが予定されている。軍事的に国威発揚を図る姿勢がうかがえる。
軍拡の道を歩むかどうかは、中国の問題である。しかし、中国がその道を選ぶことは、地域の緊張を高めずにはおかないだろうし、世界の安定にも影響しよう。
米ソが五〇年代から続けた軍拡の悪循環を、二十一世紀に米中の間で繰り返す愚は避けるべきだ。
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