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1998/11/27 朝日新聞朝刊
(社説)実り豊かとはいえないが 日中会談
中国の国家元首として日本を初めて公式訪問した江沢民主席が、小渕恵三首相とともに、日中共同宣言をまとめた。
「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する宣言」は、両国の長期的な協力関係を定めるとともに、日本が過去の中国侵略への責任を痛感し、反省していることを明記し、また台湾問題では、「一つの中国」政策を再確認した。
二十一世紀に向けて、経済、貿易、環境問題への取り組みなどで力を合わせていくことも、首脳会談で合意された。
日中平和友好条約締結二十周年にあたって、首脳間であらためて両国関係の重要性を確認しあったことには意義がある。
しかし、日中国交が正常化された一九七二年の共同声明、その六年後の平和友好条約と並ぶ新たな基本文書を作り、質的発展を図りたいという意気込みの割には、内容に乏しかったといわざるをえない。
宣言では、現在の対中、対日政策の基本の再確認が中心となった。
首脳会談でむしろ浮き彫りになったのは、日本側の歴史認識をめぐる中国側の不信感の深さだった。
江主席は、中国にとって歴史の問題は「日中関係の根幹で、避けることはできない」と述べたという。
日本の閣僚や有力政治家が歴史を無視したような発言をするたびに、中国側は批判を繰り返してきたが、江氏の調子は、首脳会談での言及としては相当強いものだ。
台湾問題でも、日本国内に「一つの中国」を認めようとしない人々がいるとも指摘した。
日米防衛協力の新指針について、台湾が「周辺事態」の対象に含まれることに強い反対を表明した。小渕首相は「地理的な概念ではない」という原則論で答えたが、議論はすれ違いのままだった。
中国側の予想以上に厳しい姿勢の背景には、中国侵略について、謝罪の言葉を宣言に盛り込むべきか否かをめぐる対立が結局解けなかったことがありそうだ。
「おわび」を含め、戦後五十周年の「村山首相談話」を踏襲した表現を文書に明記するよう中国側が求めたのに対し、日本側が小渕首相による口頭の「おわび」の表明に固執したからだ。
歴史認識問題をめぐるきしみがまた露呈してしまった。情けないことだ。
世代が代わり、侵略と戦争の時代は遠くなっていく。しかし、そうであればなおさらのこと、歴史の事実と向き合い、国際社会の視線に十分耐えうる評価をわがものとしていかねばならない。それが相互の信頼のいしずえとなるからだ。
とはいえ、いたずらに悲観すべきではないだろう。
青年の相互交流計画が決まった。未来を担う世代が様々な機会を通じて相手の国で暮らし、意思を通じ合うことこそ、過去を超えて、未来へとつなぐ糸となる。
両国はこれからますますおたがいを必要とし、国際社会にとっても、両国の健全な関係がますます欠かせないものとなる。
この秋、日韓、日ロ、日米、米韓、中韓、中ロなどの首脳会談が、重層的に行われた。立場の違いはあれ、それぞれが平和と発展という共通の課題に向かって新しい秩序を模索する動きといえる。
そのなかで、日中関係だけが取り残されることがあってはなるまい。
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