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1998/04/21 朝日新聞朝刊
(社説)「一超多強」の中国外交 胡副主席来日
中国から胡錦濤・国家副主席がきょう来日する。共産党のナンバー5。五十五歳の若さで、来世紀初めの中国を担う指導者と目されている。
この春には遅浩田国防相が来日し、日中の防衛交流が拡大した。秋には江沢民国家主席がやって来る。胡氏の来日を、新たな日中関係を築く基礎としたい。
このところ中国の積極的な外交が目立つ。今月初めのアジア欧州会議(ASEM)には、就任したばかりの朱鎔基首相が参加し、欧州連合(EU)の各国首脳と活発に会って、信頼関係を築いた。クリントン米大統領の六月訪中も固まっている。
そうした外交は、冷戦後の世界を「一超多強」の時代とみる中国独自の世界認識に裏打ちされている。「一超」は言うまでもなく米国である。「多強」はロシア、EU、日本、それに中国自身などである。
「一超」の力は、政治・軍事的にも経済・金融の面でも、いっそう強大になった。と同時に、「多強」の力も強まっていると認識し、三月の全国人民代表大会の政府活動報告では、「多極化の傾向は日増しにはっきりしてきた」と指摘している。
昨年来、米国との関係改善を進め、江主席の訪米で「建設的で戦略的なパートナーシップを共同して打ち立てる」ことを決めたのは、この認識に基づく。
とはいえ、米国に対する警戒心を解いたわけではない。
昨年九月の十五回党大会で江沢民総書記は「冷戦思考は依然存在し、覇権主義と強権政治が世界の平和と安定を脅かす主要な根源である」と報告している。
ただ、「一超」の力は当分揺るぎそうにないから、米国とは協調していくのが得策だ、と中国は見る。天安門事件の民主活動家、王丹氏の出国を認めたのは、したたかな計算にたった決断だろう。
その一方で、中国は「多強」との関係強化を急いでいる。ロシアとはすでに「戦略的パートナーシップ」を築き、EUの中でとくにフランスとは「長期的、全面的なパートナーシップ」の構築で合意した。将来、「一超」と対抗しなければならないような事態が起こったときには、「多強」と提携するという戦略がうかがえる。
そうなると、「多強」の一つである日本に対しても、新しい関係を築くよう働きかけてくるものと見られる。私たちは、中国のこうした考え方をしっかりと理解しておく必要があろう。
中国外交は、力の均衡を重視するパワーポリティックスに傾くきらいがある。
しかし、これからの世界では、「人権」や「民主」など普遍的な価値が、ますます重みを増すだろう。「一超」と「多強」の関係も、対立が軸になるとは限らない。すでに経済が「一超」と「多強」を深く結びつけ、共生の時代を迎えつつある。
互いの認識がどこで一致し、どこで食い違うか。日本と中国が、それぞれの世界認識をぶつけあう意味は大きい。
今年は日中平和友好条約が結ばれてから二十周年に当たる。この条約では、両国の恒久的な平和友好、紛争の平和的解決、覇権反対がうたわれた。
その精神はいまも大切である。その上にたって、わが国が国際社会でどのような地位を築くべきか。日米関係と日中関係をどう両立させていくべきか。
胡副主席の来日を、そうした課題を真剣に考える機会としたい。
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