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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/03/06 朝日新聞朝刊
(社説)江李朱体制の厳しい前途
 
 中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)の第九期第一回全体会議が、北京の人民大会堂で開幕した。
 この国のすべてを指導する中国共産党は昨年九月の第十五回党大会で、今後五年間の党の指導体制と基本路線を定めた。これを受けての全人代は、二つの点で注目される。一つは来世紀初頭まで中国を治めていく国家と政府の指導部の人事、もう一つは国有企業や行政機構の改革である。
 人事はすでに、おおかた予想がついている。国家主席と国家中央軍事委員会主席には江沢民総書記が再任される。全人代常務委員長は、喬石氏に代わって李鵬首相が就任、新首相には朱鎔基副首相が座る見込みだ。これからの中国は「江―李―朱」体制で運営されることになる。
 これをトロイカ体制と呼ぶには、あまりに江氏の力が抜きんでている。一九七八年以来、中国の改革・開放政策を導いてきたトウ小平氏が昨年二月に亡くなり、江氏は後ろ盾を失ったかに見えるが、実際にはますます指導力を強めている。
 トウ氏死去一周年を機に、共産党機関紙「人民日報」に掲載された江氏の署名論文には、「私は強調した」「私はかつてこう言った」といった表現が数カ所出てくる。社会主義国では、「我々は」「わが党は」という表現が普通で、毛沢東やトウ氏がそうだったように、江氏もまた「自分の言葉」で語り始めたようだ。
 全人代初日の政府活動報告では、昨年の江氏の訪米を評価し、外国の中で米国をトップに置いて「中米関係は新たな発展段階に入った」と論じた。江氏が進めてきた対米協調外交が続くことを暗示している。
 江氏の下で、経済を任されるのが朱氏である。すでに金融改革を進めてきたが、さらに中国経済の積年の弊である国有企業改革と行政改革に乗り出す。
 社会主義経済の基礎であった国有企業は、改革・開放の時代になって経済のお荷物となってしまった。改革の対象となる六万八千社の国有企業のうち、約半数が赤字を出しているといわれる。
 人間が仕事の量より多いとされる国有企業では、改革で大量の人員が整理されるのは避けられない。すでに一時帰休者は一千二百万人に達し、今後の改革によってさらに一千万人のリストラが必要だという。
 行政の改革は、現業部門を企業化するなどして、十一の省庁を減らす計画である。多数の役人がこれでポストを失う。
 こうした改革を実行するには、多くの資金がいる。だが、アジアに吹き荒れている金融危機のため、香港市場から資金を調達するもくろみははずれた。
 他のアジア諸国が通貨切り下げに動くなか、中国が「元(げん)の切り下げはしない」と再三表明しているのは評価できる。もし切り下げれば、アジアは「切り下げ競争」に陥る恐れがあるからだ。
 しかし、切り下げなければ中国の輸出競争力は低下する。すでに景気は悪くなってきているし、失業者がデモをするなど、社会不安も高まりつつあるようだ。
 八%の経済成長を維持しつつ、インフレは三%以下に抑え、国有企業改革を断行する――政府報告で打ち出された方針を実現するのは容易なことではない。
 これを乗り切るには、社会の安定が欠かせない。民の声が速やかに政治に反映されるような、政治体制の改革や民主化がますます必要になるだろう。だが政府報告は「民主・法制の建設を強化」するとしか触れていない。気になるところである。
 
 
 
 
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