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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/02/04 朝日新聞朝刊
(社説)「透明」が育む日中の信頼
 
中国の遅浩田国防相が来日した。中国人民解放軍のトップクラスの将軍で、中国共産党の政治局員でもある。中国の国防相の公式訪問は初めてだ。
 遅国防相は、防衛庁長官と会談するだけでなく、陸海空の自衛隊基地などを視察する。お互いの手の内を見せあうことによって、相手の実体を知る。それが信頼構築の第一歩である。日中の軍の首脳による交流の意義は小さくない。
 日中の軍事交流は、この数年、両国の外務、防衛の局長級による安全保障協議が続けられてきた。昨年は二回開催され、相互理解が次第に深まってきてはいる。
 しかし、中国と米国、ロシアなどとの軍事交流に比べると、日中はかなり立ち遅れていると言わざるを得ない。
 たとえば、米国からは今年一月、コーエン国防長官が訪中した。中国側はコーエン長官を、北京防衛の要(かなめ)である防空司令部に案内するなどして、米中関係の緊張を解きほぐした。
 エリツィン大統領の訪中で「戦略的パートナーシップ」をうたい上げたロシアとは、国境地帯の兵力削減協定を結ぶなど、密接な関係を築きつつある。
 中国と世界の国々との軍事交流も急速に発展している。昨年だけで、中国の軍事代表団は七十カ国を訪問し、六十七カ国から軍事代表団を受け入れた。
 日中の軍事交流が停滞している原因は、双方とも人びとの心の底に、不信感が根をはっていることにある。
 わが国では近年、中国の軍事力への警戒感が高まっている。中国が核兵器や長距離ミサイルを保持しているうえ、九年連続して二けたの伸びで国防予算を増やしてきたからだ。そのうえ、公表されていないものがあるのではないかという「不透明さ」が、不信を増幅させている。
 中国側にも、日本は再び軍国主義の道を歩むのではないかという不信感が根強い。閣僚らの侵略戦争をめぐる心ない発言や、歴史の事実を否定する動きが、こうした不信を裏打ちする材料となっている。
 さらに新しい日米防衛協力のための指針をめぐって、日本が台湾に介入するのではないかという疑心暗鬼を生んでいる。
 双方の不信感を解くため、まず必要なことは、互いの「透明度」を高めることだ。それが信頼感を育む(はぐくむ)。
 中国の総兵力は一九八〇年代に百万人削減され、いまは約三百万人とされる。けれども、まだ実態が十分透明になっているとはいえない。遅国防相の来日を機に、軍事面でのいっそうの情報公開を望みたい。
 中国は昨年九月の党大会で、今後三年間で兵力をさらに五十万人削減することを決めた。こうした軍縮の動きを大いに歓迎したい。と同時に、その背景にある世界認識の変化を読みとりたい。
 劉華秋外務次官は、昨年十一月に発表した論文でこう述べている。「かつては『世界戦争は不可避』という見方に立っていたが、トウ小平外交はこれを改め、『戦争を回避することができる』という判断を下した」。改革・開放政策で中国が経済重視の現実路線に転換したのにともなって、その軍事戦略も変わってきているのだ。
 劉次官は孔子の「己の欲せざるところを人に施すなかれ」という言葉を引き、これが中国の基本姿勢だと強調している。
 私たちも、孔子のこの言葉に異存はない。日中で確かな信頼関係を築き上げ、日米中、さらには日米中ロの多角的な軍事交流の場へと発展させていきたい。
 
 
 
 
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