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1995/10/03 朝日新聞朝刊
(社説)高成長めざす中国の課題
改革・開放政策で、急速な発展を続けている中国が、さらに二〇一〇年まで、高度成長を維持する基本方針を打ち出した。
中国共産党は国慶節の直前、第十四期中央委員会第五回全体会議(五中全会)を開いたが、この会議の焦点は、改革・開放政策の結果引き起こされた「格差」の問題をどう扱うかにあった。
中国科学院の胡鞍鋼氏によると、広東省の経済特区・珠海と貴州省の農村の一人当たりの国内総生産(GDP)は八十六倍の開きがあるという。「先に豊かになる所があってもよい」というトウ小平路線が、十五年ほど続いた結果、沿海部と内陸部の格差が、ここまで広がったのだ。
五中全会をひかえ胡氏らは「もはや特区を優遇する時代は終わった」と主張した。これに対し「まだしばらくは、高度の成長が必要だ」と沿海部は反発した。
だが、五中全会のコミュニケは、九つの重要方針の第一に、国民経済の「快速」発展を掲げた。地域格差の縮小は、後ろから二番目の第八項目だった。
中国は国民総生産(GNP)を一九八〇年の四倍にする目標を今年中に達成する見込みだ。人口は、八〇年から今世紀末までに三億人増えそうだが、一人当たりのGNPも今世紀末までに四倍にする。そして二〇一〇年には、GNPを二〇〇〇年の倍にする方針が決まった。
巨大な隣国の人々が、豊かになるのはうれしいことだ。これを達成するために、中国は当面、年八%程度の成長を見込んでいる。しかし、これだけの高度成長が混乱なく、安定的に進められるかどうか。これまでの中国経済は、過熱と引き締めを繰り返してきたからである。
高度成長にともなって、食糧、エネルギーの不足をもたらさないか、大気汚染や水質汚濁などの公害がさらにひどくなるのではないか、という心配もある。
食糧や石油の不足は、国際的な価格の高騰につながる。酸性雨は海を越えてわが国にも降り注ぐ。中国の高度成長は、世界規模でさまざまな影響を与えずにはおかないのである。
五中全会では「農業を国民経済発展の首位に置く」と決めた。中国自身、人口増加や食生活の改善にともなう食糧不足の危険を自覚し始めているようだ。しかし、食糧増産の具体策は明確でない。来年の全国人民代表大会で決まる第九次五カ年計画で、具体策を示してもらいたいものだ。
さらに、二〇一〇年までの壮大な目標を達成する上でもっとも大切なのは、平和な国際環境の維持である。改革・開放政策によって西側の資本と技術を導入し、西側へ輸出することで中国の成長は支えられてきた面が大きい。
しかし、最近の中国の対台湾政策は、こうした平和な国際環境を台なしにする危険性を感じさせる。台湾の李登輝総統を「台湾独立派」と断定し、「台湾の武力解放を放棄しない」と再三言明している。中国国内には「台湾が独立を宣言すれば、武力で解放せざるを得ない」との声も強い。
これは台湾に対する中国のけん制だろうが、もしそんな事態になれば当然、台湾の武力反撃を引き起こす。米国も黙視してはいまい。台湾海峡をミサイルが飛び交うようなことにでもなれば、中国に進出した資本は引き揚げることになろう。
そうなれば、二〇一〇年の目標は夢物語に終わり、中進国への離陸は難しくなる。中国は、平和な国際環境の大切さを肝に銘じて、台湾との対話を進めてほしい。
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