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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/07/08 朝日新聞朝刊
歴史の溝深く 中国・盧溝橋で抗日戦争50周年式典(時時刻刻)
 
 北京市郊外の盧溝橋近くで七日、市の「抗日戦争勝利五十周年」式典が行われた。日本と中国が全面戦争に突入するきっかけとなった一九三七年七月七日の盧溝橋事件の舞台。今なお、歴史の溝は深く、会場では日本に対する友好と警戒が幾重にも交錯した。七月に入って中国全土で本格的に展開され始めた抗日戦争五十周年の記念行事は、九月三日の政府式典で最高潮になる。中国政府は、二度と侵略されない強国をめざし、民族の団結と経済発展を叫ぶが、国民の反応には世代差もうかがわれる。
(北京=五十川倫義)
●盧溝橋で
 北京の中心部から南西に約十五キロ。七日朝、盧溝橋そばの抗日戦争記念館に、市幹部や老兵士、学生ら二千人が集った。
 北京市のトップである尉健行・市書記は、戦争の犠牲者を悼み、中華民族の団結を訴えた。「中国は八カ国連合軍の北京占領で二十世紀を迎え、三、四〇年代には日本の侵略者に辱められた。祖国を強くし、再び侵略と侮りを受けるまい」
 続いて立った老兵士代表や、万里の長城で戦った将軍の娘は「日本との友好とともに、日本軍国主義の復活も警戒しよう」と呼びかけた。
 出席した清華大学の学生たちに聞いてみた。
 「中国が、現在は繁栄していることが、とてもうれしい」「両民族は友好を保ち、ともに進歩していくべきだ」「日本は経済だけが強くなるのではなく、アジアとの関係をうまくやってほしい」「日本軍国主義の復活に、日本国民も注意してほしい」
 革命歌の合唱のなかで、千羽のハトが快晴の空に飛び立った。
●新たな研究
 このところ、過去の資料のなかから見つかった新事実とされる研究結果や、あまり知られていない出来事が次々に公表されている。
 広東省の新聞「南方日報」は五日、「旧日本軍『波八六〇四部隊』が、省内の難民収容所で香港からの難民に細菌を使い、殺害した」とする広東社会科学院の沙東迅教授の研究を報道した。
 四日には北京市の文書館が中国人従軍慰安婦八十人のリストを初めて公表し、六月下旬には、新華社が、江西省で旧日本軍のものと見られる化学兵器の原料の金属容器二百個以上が発見されたことを伝えている。
 日本政府は今年、中国に残された化学兵器の処理と慰安婦問題の対策に動き出したが、一方で、埋もれていた過去が次から次へと浮かび上がってきている。
●過去と現在と
 六月下旬。戦争で母親や兄ら家族四人を失い、自分の背中にも三カ所の刀傷がある婦人ら十数人が、日本大使館前でのデモを計画した。「日本の国会決議は謝罪もなく、侵略の罪を消し去った」と怒り、謝罪と補償を訴えようとした。だが、予定された朝、警察車両が大使館の周囲を固め、婦人らは大使館に現れなかった。
 中国のある政府筋は「市民が反日運動を起こさないように、中国政府がコントロールしている」と語る。宣伝しだいで、反日運動に簡単に火がつく、というのだ。別の中国筋は「いったん反日デモが起こると、収拾がつかなくなる」とも。
 だが、日中戦争に対する市民の受け止め方は、もはや一様ではないようだ。
 最近のテレビで、こんなコントが演じられた。「鬼子」(旧日本軍)が、地雷を次々に埋め、「八路軍」(共産党軍)が、それを必死で掘り出す。客席は大笑いだった。有力紙がこれにクレームをつけた。「そんな、笑える戦争じゃなかった」と。薄れゆく記憶を嘆き、「歴史教育が必要だ」と訴えた。
 北京の繁華街の大型書店。第二次世界大戦についての書物が三十数冊並んでいた。大半は日中戦争ものだ。その横はカセットテープ売り場。新入荷の広告チラシに、「実用日本語会話」など、多数の日本語学習テープが紹介されていた。戦争から交流へ、過去と現在とが隣り合わせだった。
●経済発展を
 七日付の人民日報は盧溝橋事件についての社説を一面トップに掲げた。「遅れた社会は打たれる。民族が自立し、強くなるには、経済と科学技術を発展させ、強大な総合的国力を保持しなければならない」
 そして、「日本の絶対多数の国民は、戦後五十周年を機会に、侵略の歴史を反省し、真剣に歴史の教訓を総括している」としたうえで、「一握りの、歴史を覆そうとする勢力があり、政界にもその代表的人物がいる」と指摘した。
 謝罪の言葉がなかった国会決議には強い反発を抱いている中国だが、多数の日本国民は、戦争を美化する勢力とは違う思いであることを示し、「両国民は友好を続け、悲劇を絶対に繰り返してはならない」と結んでいる。
 
 
 
 
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