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1994/03/15 朝日新聞朝刊
(社説)中国の「安定的発展」と人権
日本や西側先進国の景気低迷をよそに、中国経済はめざましい勢いで発展している。九二、九三の二年連続、国内総生産(GDP)は約一三%の伸びを見せた。世界経済の中で活力に満ちているアジア、その中でも中国の成長は突出している。
だが、高度成長のかげで、インフレやさまざまな格差の拡大、資源・エネルギーの不足などの問題が顕在化してきた。汚職や腐敗もはびこっている。また、八九年の天安門事件など民主化運動に参加した人々に対する拘束が続き、イデオロギーの引き締めも強化されている。
こうした状況下で、中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開催され、李鵬首相が政府活動報告を行った。さらにクリストファー米国務長官が訪中し、人権問題や最恵国待遇(MFN)をめぐって中国指導部と会談した。
一連の会談で米国側は、中国の人権問題の改善が不十分だとして、MFNの更新に難色を示した。これに対し中国側は「内政干渉」と反発し、MFNを更新しなければ米国経済も痛手を負うと警告、話し合いは平行線をたどったようだ。
中国がどうなるか、それは日本にとって大きな関心事である。いまや中国は日本にとって第二の、中国にとって日本は第一の貿易相手国であり、中国が混乱に陥れば大きな影響を受ける。また、ともに日本と友好関係にある米中の関係が悪化するのは望ましくない。その意味で、中国の動きと米中関係には、とくに注意を払っておかなくてはならない。
全人代での李鵬報告のキーワードは「改革、発展、安定」であった。「チャンスをしっかりとつかみ、改革を深化させ、開放を拡大し、発展を促し、安定を保持すること」が大切だ、と報告は強調した。
そのうえで今年の経済成長率の目標を九%と設定し、「引き続き数年間、八―九%の成長率を保つことができれば、たいした成果である」とうたった。そして昨年、二けたに上昇した小売物価を、一けたに抑え込む方針を打ち出した。
総じて言えば中国経済は、問題を抱えつつもなんとか回ってきたし、今後も「安定的に発展」させようというわけだ。
しかし、高度成長を続けつつ安定をはかるのは、なかなか難しい。昨年の全人代でも、成長率の目標を「八―九%」と設定したが、結果はこれを大幅に上回ってしまった。よほどしっかり手綱を引き締めないと、経済が再び過熱する恐れがある。
インフレがひどくなって、大衆の不満が高まる。それを背景に、民主化を求める運動が起こる。それを中国の指導部は一番恐れているのではないか。
中国の公安当局がクリストファー長官の訪中を前に、民主運動家を次々に拘禁したのは、米国が中国の民主派をたきつけ、「和平演変」(平和的政権転覆)を企てていると警戒し、芽のうちに抑え込もうとしているためだろう。
「途上国では、生存権と発展権が人権の基礎」という中国の主張もわからぬでもない。民主化と人権問題を振りかざして強引に譲歩を迫る米国のやり方も、あまりに性急すぎるきらいはある。
だが、人権の尊重は、国境を越えた普遍的価値であり、全世界的な潮流である。経済の発展につれて、人々の政治的要求が拡大するのは自然の成り行きだ。中国が長期的な「安定」を求めるなら、民主化や人権の尊重を大切にし、国民の意思を政治に反映させることが必要だ。
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