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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/12/22 朝日新聞朝刊
(社説)毛沢東ブームを支えるもの
 
 故・毛沢東中国共産党主席の生誕百年を二十六日に控えて、毛沢東株が急上昇しているという。記念行事だけでなく、バッジやTシャツなどの毛沢東グッズは若者にも人気がある。上海では、農民の平均収入十年分にあたる肖像入りの金時計がどんどん売れたそうだ。
 毛沢東は十七年前に死去したが、晩年に彼が発動した文化大革命は内外ともに評判がよくない。政敵打倒の代償に多くの人命が失われ、混乱は十年に及んだ。共産党も一九八一年の「歴史決議」以来、文革での毛沢東の過ちを公式に認めている。
 五〇年代から相次いだ思想闘争、人民公社化、人口増加の放任なども、毛沢東の失政として批判されている。知識層などの間では「建国に功あり、治国は無策、文革有罪」との評価も聞かれる。
 では、いまなぜ毛沢東ブームなのか。
 ひとつには、政治情勢の投影が挙げられる。保守派は毛思想の学習強化を要求し、暗に現路線の社会主義からの逸脱を批判する。これに対し、主流派の喬石・全国人民代表大会常務委員長は「毛沢東思想と小平理論とを比較して理論を批判する動きは、改革の否定につながる」と警告したという。「小平後」もからむこの種のせめぎ合いは、今後も尾を引きそうだ。
 毛沢東の大衆路線を持ち出しての特権批判などは、体制側の痛いところをついている面もあろう。そうした共感から毛バッジを付け、自動車の運転席に毛沢東の肖像をぶらさげる人もいるかもしれない。
 いまの毛沢東ブームには、文革期のように毛沢東を無条件に崇拝したり、その思想を絶対視したりするような面はない。毛沢東の故郷、韶山(しょうざん)をルポした最近の「北京週報」の記事も、毛沢東にあやかろうとする食堂やおみやげ店の商売気ばかりが目立つ、と書いていた。
 とはいえ、毛沢東は中国の現体制の創始者とされる政治家だ。その業績をある意味で評価すればこその人気に違いない。
 中国革命は半植民地状態を終わらせ、誇りを持って国づくりへと進む道を開いた。その立役者は毛沢東だった。その後も米ソに対抗し、自力更生を呼びかけた。
 この出発点こそが、国の発展や個人の能力発揮を可能にする。そこで中国の人びとは、毛沢東の「建国に功あり」の部分を取り出し、階級闘争重視などの思想面は無視して、現代向きの毛沢東ブームをつくり上げたのではあるまいか。
 いま、経済活動に注ぐ中国人のエネルギーは驚異的だ。国際市場で他国と渡り合う場面も増えている。彼らと接する外国人は、中国人たちを動かす核心に、中国革命がもたらした自信が根づいているのを感じることが少なくないという。
 彼らがみな毛沢東賛美者とは限らない。だが毛沢東が先導した建国が、世界に向けての確固とした活動の舞台を準備した。これは経済人だけでなく、政治家やインテリを含む多くの中国人の共通認識であることを、私たちは知っておく必要がある。
 中国と同じく、経済の繁栄を求めて走り出したベトナムでも、独立闘争、抗米戦争を指導したホー・チ・ミンが深く尊敬されている。経済的発展を求める国と民衆が、活動の裏付けとして民族的な求心力を必要とする時代なのかもしれない。
 毛沢東ブームは、ファッションのような気軽さで広がった。古めかしい名前の裏側に、新しい動きも感じられる。隣国との相互理解を深めるためにも、そこにひそむメッセージを正確に読み取ってゆきたい。
 
 
 
 
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