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1993/08/09 朝日新聞朝刊
(社説)中国は経済の過熱防止を
中国の経済が過熱し、インフレが深刻になってきた。今年上半期の統計では、国内総生産(GDP)が一三・九%伸び、工業生産も急増する一方で、小売物価は二けたの上昇を記録している。
本社取材団と会見した江沢民総書記兼国家主席は、中国のめざす社会主義市場経済を「国家の所有制と、市場経済の資源配分の優位性を効果的に結び付けること」と説明したが、中国経済の現実は、この路線が試練の下にあることを示している。
最高実力者の  小平氏は、二十二日に満八十九歳の誕生日を迎え、重病説も絶えない。江総書記は「  氏は健康だ」と断言したが、なんといっても高齢である。経済過熱に、万一にも「  以後」の不安定な社会、政治状況が重なれば、中国は混乱に陥る。こうした事態は避けねばならない。まず、経済の安定をめざしてほしい。
中国経済は建国以来、景気が過熱すると国家が冷水を浴びせる「過熱と引き締め」を大小八回も繰り返してきた。一九八八年の「過熱」が天安門事件につながり、その後、二年半におよんだ経済の引き締めは、記憶に新しい。
中国は今回、全面的な引き締め政策はやめて、市場メカニズムを生かす手法を柱にすえ、これに必要な行政手段を加えるマクロ規制方式で臨んでいる。
経済過熱の最大の原因は、公共投資と民間設備投資を合わせた固定資本投資の六割を超える異常な増加にある。
もとをただせば、  氏が「改革開放を加速せよ。発展のチャンスを逃すな」と号令を発し、地方や企業が競って、開発や生産規模の拡大に乗り出した結果だ。
中国には、ゴーサインが出ると突っ走る傾向がある。慎重論を唱えると、思想の解放が不十分などとみなされるからだ。しかし、成長に必要なエネルギーや原材料の供給、輸送力はすでに限界状態にある。
経済建設と改革開放の政策は軌道に乗り始めており、あせって急成長をめざすのは得策ではあるまい。しかも、市場経済への転換期にあるだけに、経済運営にはより慎重なかじとりが必要だ。
すでに「泡末(バブル)経済」の発生が懸念されている。投資のための資金が地方から沿海地区に集中的に流れ、不動産や株券、商品先物などの投機に回っている。その結果、鉄道や通信などの産業基盤建設投資に、悪影響があってはならない。
逆に、地方では現金がなくなって、給料代わりにアヒルなどの現物支給を受ける例も出ている。自宅待機や操業停止に追い込まれる工場まであるという。
権力の腐敗も進行している。インフレよりも、金融機関や政府の役人が不正融資の見返りに賄賂(わいろ)を受け取るなど、投機分野にはびこる「通貨腐敗」の方が深刻だと指摘する若手経済学者もいる。
こうしたなかで、〓氏の信任厚い朱鎔基副首相が病気の李鵬首相に代わって経済運営にあたり、金融混乱で解任された中国人民銀行総裁の職務も兼ねるなど、インフレ防止の陣頭指揮に立っている。経済問題の処理に長じた朱氏は、特にバブル経済と腐敗の防止に力を入れてもらいたい。
天安門事件の際、「今の幹部の腐敗ぶりは、末期の国民党幹部よりひどい」と市民は顔をしかめていた。いまや、市民までが拝金主義に汚染されようとしている。
江総書記は会見で、拝金主義の横行と権力の腐敗を認めた。市場経済化に伴う「負」の部分を克服できるかどうかに、社会主義中国の将来がかかっている。
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