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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/07/08 朝日新聞朝刊
(社説)中国農民の大きなため息
 
「農家は負担金にあわてふためき」
 「どこもかしこも金策に困りはてる」
 中国・四川省のある農家の玄関の両わきにこんな対句が張られている、と中国紙が農村の窮状を伝えた。
 「農村は乾ききった柴(しば)のようだ。農民の負担は極限に達し、いったん火がつけば収拾がつかなくなるだろう」
 地方の農村幹部の予言通り、各地で農民の騒動が起き始めた。農業問題は経済の過熱問題と並び、政治問題化している。
 中国は人口十二億の九億までが農民というとてつもない農業国だ。従順で我慢強い農民が決起するようなことにでもなれば、中国は地殻変動に見舞われかねない。
 中国の安定は農村の安定を前提としている。農業の安定がなくては、中国の将来はないといえるだろう。
 「九〇年代の経済に問題が出るとすれば農業だ。問題が起きれば、数年は回復不能に陥る」。最高実力者小平氏の警鐘は正しい。しかし、氏が号令をかけた改革開放の加速政策が、逆に農民を追い詰めている面も見逃せない。
 地方の役人が農業予算を他の経済建設に転用して農産物代金を払えない問題、農産品価格の低迷と農業資材の高騰で、増産が増収につながらない問題、さまざまな名目で押し付けられる負担金、開発区ブームによる耕作地の減少など、ほとんどの問題は農家が被害者である。
 中国の経済改革は、農村から始まった。その結果、農民と都市生活者の収入格差は七八年の一対二・四から、一時は一対一・七まで縮まったが、八〇年代半ばに改革を都市重点に転換してから再び拡大し、昨年は一対二・三になった。
 「万元戸」や「億元村」と呼ばれる豊かな農村は、都市近郊や農村企業を多く抱えた地区にすぎない。沿海部と内陸部との格差も広がる一方だ。
 条件が整った地区は、先に豊かになってもよいとする「先富論」の影響もあろう。しかし、遅れた地域を引っ張って、ともに豊かになろうとする視点を忘れては、農家はやりきれない。
 中国の経済建設は一貫して重工業優先だった。解放以来、約一〇%を占めてきた基本建設に占める農業投資の割合は、改革開放後、半分以下に激減し、重工業にさらに傾斜している。
 水利建設などの農業投資が減る一方で、人民公社以来の共同労働は、家庭生産請負制の普及で軽視された。このため生産基盤は老朽化し、遺産を食いつぶす形で生産を維持しているのが現状だ。
 工業の発展が二〇%を超える急成長なのに、農業は微増にとどまっている。工業と都市優先の改革開放政策のツケが回ってきた結果といえよう。
 過熱状況にある中国経済を冷やすためにも、工業偏重の投資を改め、農業の基盤整備などに振り向けるべきだ。中国のような発展途上大国では、農業と工業の均衡がとれた経済発展こそ必要である。
 天安門事件の発生にもかかわらず、社会主義体制が持ちこたえられたのは、改革で豊かになった農民の力によるところが大きい。しかし事件後は、農民の実質収入は伸びず、改革の恩恵も色あせている。
 安徽省で農村改革を指導したことのある万里前全人代常務委員長は最近、「新中国建設以来、農民はいつも被略奪者の位置にあった」と語ったといわれる。
 「農業重視」をこれ以上、スローガン倒れにしてはならない。
 
 
 
 
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