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1993/03/30 朝日新聞朝刊
(社説)「  小平以後」の重い課題
中国の全国人民代表大会で国家の主要人事が決まり、基本的に江沢民共産党総書記―李鵬首相体制が継続することになった。社会主義の生き残りのため、政治の安定を何よりも優先させ、経済建設にあたる強い意志を示している。
全人代の万里常務委員長と楊尚昆国家主席の引退によって、長征体験組など革命・解放戦争時代の指導者が政治の表舞台からすべて姿を消す。
両氏は、八〇年代の改革・開放政策を引っ張ってきた最高実力者  小平氏につながる象徴的な人物である。その退陣は、二十一世紀にかかる「  小平以後」の体制が実質的に始まったことを意味している。
国家主席を兼ねることになった江氏や留任の李首相、全人代常務委員長、政治協商会議主席にそれぞれついた喬石、李瑞環両党政治局常務委員らはともに、建国後に政治的経歴を積んだリーダーたちだ。
今回の世代交代と、憲法に新たに加えられた社会主義市場経済の導入は、中国の本格的な改革・開放と近代化を人事と政策の両面で支えるものだろう。
中国はいま、新しい時代への過渡期にある。中国の安定は日本はもとより、アジアの平和と安定にも大きくかかわってくる。時代の変わり目にあたり、混乱なく進めてほしいと願わずにはおれない。
その上でいくつかの危惧(きぐ)すべき点を指摘しておきたい。まず、党と政府の職能を分離する方針が否定され、党の指導的役割が再び強化されていることだ。
党政治局常務委員の多くが、国家の最高指導ポストにつき、地方でも党書記が全人代の責任者や省長を兼ねる例が出ている。天安門事件の教訓に学び、旧ソ連、東欧のような体制崩壊を未然に防いだり、今後、強まるとみられる民意重視の傾向に備えるねらいであろう。
「党政分離」は八七年の党大会で活力に満ちた社会主義政治体制を確立する目玉の方針として出された。これを否定するような今回の人事は、これまで名目ポストとされてきた要職に現役の実力者を配置した点では簡素化といえなくもないが、改革後退の印象はやはりぬぐえない。
さらに、江沢民氏への党、国家、軍の権力集中がある。  氏はかつて、党と国家の指導体制について「権力を過度に集中すべきでない」と述べたことがある。
「  以後」とはいっても、  氏が健在なうちは最高実力者であり続けることに変わりはない。仮に、こうした権力集中体制の方が操縦しやすいと考え、次代の指導者もそれを安易に受け入れるなら、本格的な後継体制が育つには、なお、かなりの時間がかかるだろう。
活動報告では、今後の経済成長率を八%―九%に引き上げる高成長政策が打ち出された。物質生活が豊かになれば、国民の関心はやがて、文化や政治の民主化の方向に向かうのは避けられない。
改革・開放の加速に伴い社会全体の腐敗も広がりを見せている。民主化運動が国民の広い支持を集めた背景には、特に党幹部の腐敗に対する強い不満があった。
今後の経済発展を保障するためにも、政治改革などを通して腐敗を退治することが欠かせない。たとえ、市場経済化がうまくいったとしても、腐敗が広がれば、民心は離れざるをえないだろう。
「  以後」の体制は、経済建設と密接不可分の問題として、民主化や腐敗防止にも真剣に取り組まなければならない課題を背負っている。
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