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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/10/28 朝日新聞朝刊
(社説)中国に示した新しい天皇像
 
 天皇、皇后両陛下が中国訪問を終えて、きょう帰国される。国民の多くがこれまでになく、はらはらしながら、見守った旅ではなかったろうか。
 国交正常化20周年の友好親善が目的とはいえ、戦前は「日本軍国主義の象徴」とみられた天皇が、大きな被害を与えた隣国を初めて訪問する旅だったからである。
 結論をいえば、訪問は中国の人々の天皇観を大きく改めるきっかけとなり、相互理解を広げる成果を生んだと思う。
 中国国内での天皇報道はこれまでタブーとされ、皇軍の名前や南京虐殺、満州国に代表される侵略のイメージが高齢者を中心にそのまま残っていた。
 今回、中国のマスコミは「相互信頼による友好関係」を強調される天皇の発言や、生物学専攻の科学者であり、中国の古い文化に興味をもたれていることなどを精力的に紹介してきた。
 さらに、ブラウン管に映るご夫妻の姿を通して、中国の人々に新しい印象を与えたことは間違いあるまい。明るい、友好的なイメージは、今後の日中関係に好ましい影響を与えるだろう。
 晩さん会で天皇は「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」という表現で、日本の責任と遺憾の気持ちを表された。
 明確な謝罪ではなかったが、楊尚昆国家主席の「温かい言葉に感謝します」といういい方に中国の反応がよみとれる。今の天皇にこれ以上の謝罪を求めるのは不適当との判断に立つものだ。
 もちろん、被害者の思いは一片の謝罪の言葉で償えるものではないだろう。楊主席が改めて指摘したように、「前のことを忘れず、後の戒めとし、歴史の教訓を銘記すること」が大切だ。問われているのは、日本の今後の対応である。
 一般市民の心の中まではのぞけないが、訪問の成果について当局は非公式に「満足」と評価している。中国側にさまざまな思惑があるとしても、日本側の「歴史に一つの区切りをつける旅」との位置付けからすれば、目的は果たしたといえよう。
 中国側の気の使いようは、少し異常とも思えるものだった。日本側を刺激しかねないとして、佐川急便問題の報道を自粛したり、日本のマスコミに市民に直接取材しないよう求めたりした。
 両国がなお、不安定さも残す特殊な関係を脱していない証明でもある。いいたいことをいえる仲になるために、今度の訪問がその第一歩となるよう期待する。
 日本の国民にとっても、両国関係を考えるよい機会となった。天安門事件以後、対中感情が悪化していただけに、訪問で正確な現状理解が深まったとすれば、喜ばしいことだ。
 謝罪問題は、政治の責任において決着すべきものである。戦後もまもなく半世紀を迎えるのに、なお戦後処理が全面的な解決に至っていないのは残念だ。ここで国家としてのけじめをつける必要がある。
 3年後には戦後50年の節目を迎える。それに向けて国会決議で「過去の戦争責任の反省と、平和と国際協調に生きる決意」を示すよう求めたい。
 中国と同じように、日本が多くの被害を与えた韓国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、台湾などアジア諸国・地域への配慮も当然、忘れてはなるまい。
 戦後日本の「過去」から「未来」に向けた旅はまだ始まったばかりだ。
 
 
 
 
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