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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/10/20 朝日新聞朝刊
(社説)中国は「大きな竜」になれるか
 
 中国共産党の14回大会が、社会主義市場経済の建設をうたった政治報告と若返り人事を決めて閉幕した。
 大会は最高実力者、小平氏の改革・開放の加速路線を理論と人事の両面で固めたといえる。階級闘争から転換した1978年の3中全会と並んで節目の会議として位置づけられるだろう。
 中国は市場経済の導入に加え、ガット(関税貿易一般協定)参加の意欲もみせている。開かれた経済体制の道を本格的に歩もうとする隣国の安定と政策の継続を願いつつ、自立への努力を支援したい。
 氏は、年明けの南方視察で「中国で社会主義を堅持せず、改革・開放をやらず、経済を発展させず、生活を改善しなければ、死の一路あるのみ」と述べたが、大会の基調はこの言葉に尽きる。
 中国は、21世紀半ばまで経済建設の遅れた社会主義の初級段階が続くとみて、80年の国民総生産(GNP)を90年に倍増、今世紀中には4倍増とし、来世紀半ばまでに中進国水準に引き上げる3段階の発展戦略を展開している。
 90年目標は達成したが、発展のテンポをさらに速めるため、市場経済導入に踏み切った。一党独裁や公有制などを条件にしているものの、実態は中国式資本主義といってよい。5年後の香港返還や将来の台湾との統一に備える面もあろう。
 最も気になるのは、経済建設の成果を急ぎすぎていることだ。氏は「スローテンポの発展は、停滞か後退に等しい」と広東並みの急成長を指示している。
 市場重視を打ち出した前大会の翌88年には、2ケタのインフレと預金引き出しパニックを招いた。中国のような発展途上大国は安定成長をこそ心がけるべきだ。
 社会主義市場経済の実態が分かりにくいことや、沿海部と内陸部との格差拡大の恐れ、さらにポスト小平の政局動向など気がかりな面も多い。
 人事は革命第2世代が姿を消し、江沢民党総書記、朱鎔基副首相ら第3世代を中心に胡錦濤氏ら第4、5世代の登用が始まった。革命世代から経済の分かるテクノクラートの時代が到来したといえる。
 顧問委員会が廃止された意味は大きい。元老が同委員会に退いた82年の12回大会で故葉剣英氏は「雛鳳(すうほう)は老鳳の声より清し」と唐の詩人李商隠の詩句を引いて、若い指導者を励ました。
 しかし現実には、長老は一線を退いても「労苦をいとわずに働き、死してのち止む(やむ)」として、改革や民主化の足を引っ張ってきた面があるのも事実だ。
 世代交代が進んでも、氏は最後まで権力の座にあるだろう。大会報告や論議では改革・開放を「新しい革命」と呼び、「解放の毛沢東」に「経済建設の小平」を対比させる動きがみられた。党指導部選出の不透明さに加え、個人崇拝の傾向は近代化に逆行しないか。
 政治改革が後退したのは残念だ。人民代表大会の強化や行政簡素化にとどまり、前大会で打ち出された党政分離や社会の対話協議制は姿を消した。ソ連解体と天安門事件の後遺症だろうが、経済改革を成功させるには政治改革が欠かせない。
 中国がモデルとする「4つの小竜」の1つシンガポールのリー・クアンユー前首相は「中国が改革・開放路線を堅持すれば、大きな竜になるだろう」と述べた。
 市場経済と一党独裁をどう折り合わせたら「大きな竜」になれるのか。中国の新しい実験を見守りたい。
 
 
 
 
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