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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/08/03 朝日新聞朝刊
(社説)市場経済に踏み込む中国
 
 5年に1度の中国共産党大会が近づいた。いま政治報告の原案が内部討議されているが、今後の経済運営システムとして、社会主義中国がタブーとしてきた市場経済中心の「社会主義市場経済への移行」をうたいあげることが確実となった。
 解放後43年を迎える中国では、当初の30年は旧ソ連モデルの計画経済、改革開放後の13年は計画経済プラス市場経済の折衷型だった。より開かれた経済体制を本格的に導入しようとする試みは、歓迎されるべきだろう。
 どちらの経済体制が経済発展に有利かはすでに決着ずみだ。国際経済の中に組み込まれつつある中国が、国際競争に勝ち抜くためにも当然の選択といえよう。
 これには最高実力者小平氏の意向が働いている。恐らく東欧、ソ連の崩壊に衝撃を受け、市場経済でなければ体制維持は難しいと判断したのだろう。
 「私に資本主義の帽子をかぶせようとしても恐れない」とまで言い切ったという。これまで3度の失脚を経験しながら復活、22日に88歳の誕生日を迎える氏の最後の踏ん張りともいえる。
 この構想は、30年前に「黒ネコでも白ネコでもネズミを捕るネコがいいネコだ」としたネコ論の延長線上にある。今回は、「計画経済と市場経済はいずれも経済手段であって、それぞれ社会主義と資本主義を区別する象徴ではない」として発想の転換を強く求めている。
 そして氏は、社会主義の代名詞だった計画経済にこだわらず、生産力や総合的な国力の発展に有利かどうか、生活水準の向上に有利かどうかで判断すべきで、資本主義先進国の経営、管理方式を大胆に吸収しなければならない、と説く。
 一方、市場経済という鳥を、計画経済のかごの中に閉じ込めようとする「鳥かご経済論」で知られる陳雲氏は、先に経済特区を評価する発言をして注目を集めた。
 陳氏が今度の動きをどうみているのか分からないが、江沢民党総書記は「何人かの中央の同志と意見を交換したが、基本的に賛成だった」と述べ、双方で何らかの妥協が成立した可能性がある。
 ただ市場経済の本格導入といっても、条件つきではある。公有制の基礎や労働に応じた分配など社会主義の精神は守りつつ、市場経済と計画経済の長所を相互に発揮させようとしているようだ。
 市場経済への移行には多くの問題点がある。市場化プログラムが不明なので予測はできないが、まず、共産党政権下で市場経済がはたして可能なのか。
 直接管理から間接管理へ、ミクロ管理からマクロ管理への変化で、権力削減に追いこまれる党・政府の官僚にくわえ、競争力で劣る国営企業の抵抗が予想される。
 さらに、市場化は民主化を促し、私有化に道を開く可能性を否定できない。
 もうひとつ、心配なのは景気の過熱だ。「引き締め」と「開放」を繰り返してきた中国経済は3年余の経済調整を終え、氏が改革の加速を号令して以来、再び過熱気味に動いている。
 経済混乱に陥った場合、計画経済を重視する保守派の台頭もありえよう。
 中国は、伝統的社会から近代化社会への全面的な転換期にある。こうした中で中国は、「安定を前提とした高度成長」という難しい命題に挑戦する。
 中国の安定は日本にとって無関係ではない。大胆な実験を注視するとともに、隣国として何ができるかを考えたい。
 
 
 
 
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