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1992/06/01 朝日新聞朝刊
(社説)南北等距離へ踏み出す中国
北京の空に太極旗が舞い、ソウルの街に五星紅旗がひるがえった。
アジア大会やソウル五輪の情景ではない。先月中旬、北京で初めて大韓民国商品展が開かれ、国名と国旗の使用が正式に認められた。ソウルでも中華人民共和国商品展が26日から1週間開かれ、同じ措置が取られている。
一昨年の貿易代表部設置合意以後、着実に進展してきた中韓関係がここに来て、さらに歩みを速めている。この流れが、朝鮮半島の緊張緩和をさらに促進するものとして、私たちは歓迎している。
とくに、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核査察受け入れをはじめ、政策のかじ取りをより開かれた方向へ切り替える刺激剤となるよう期待したい。
最近の両国の接近ぶりは、昨年11月と今年4月の外相相互訪問をはじめ、貿易協定、投資保護協定調印など目を見張るものがある。李鵬首相は、初めて北京を訪れた李相玉外相を政治の中枢である中南海に招き入れ、ハイレベルの交流を進めることで同意したようだ。
双方の貿易額は昨年、中国と北朝鮮の10倍以上にあたる58億ドルを記録、貿易代表部は領事機能を備え、外交官とも接触するなど実質的に国交樹立と変わらない関係となりつつある。
経済建設最優先のため、善隣友好の全方位外交を展開する中国にとって、朝鮮半島の緊張緩和は残された大きな課題の1つである。政治的には北朝鮮の顔を最大限立てながら、経済的には韓国とより深いつながりを求める南北等距離外交に踏み出したといってよいだろう。
対韓国交にあたっては、朝鮮半島のバランスを崩さないように進めるのが、中国の基本姿勢だ。中朝両国が長い国境で接し、北朝鮮が混乱すると中国自身にもはねかえるからだ。そのため旧ソ連のような電撃的な方法でなく、日朝、米朝、南北の交渉進展などを見極めつつ慎重に進めようとしている。理性的な態度といえよう。
一方、社会主義諸国との関係改善をめざす韓国の「北方外交」は、旧ソ連、東欧に続き、今度の中国で総仕上げの時期を迎える。年末までにはベトナムとの国交樹立もめざしているといわれる。
一昨年の韓ソ国交は北朝鮮を、対日国交正常化の提案、南北の国連同時加盟、南北首相会談の実現など、現実的な柔軟路線へと導いた。ただ、経済苦境の北朝鮮をあまり追い詰めるのは、「対立」から「共存」へと動き出した朝鮮半島の平和と安定にとって、プラスにならないだろう。
北朝鮮の経済再建は緊急の課題といわれる。ロシアとの関係は冷え、中国は国内建設に精いっぱいで多くの援助は期待できない。とすれば日韓米の西側3国の協力はどうしても欠かせない。南北対話と日朝、米朝交渉の進展を同時に期待したい。
中韓接近に伴って生まれる、もう一つの難問は韓国と台湾の関係だ。台湾は先に総統特使をソウルに派遣した。早ければ年内にも中韓国交樹立がありうるとみて、台韓断交後の関係を模索するのがねらいだったといわれる。
20年前の日中関係正常化の際、韓国の世論は台湾との断交に踏み切った日本を「恩知らず」と批判した。その韓国が今、日本と同じ立場に立っている。
朝鮮半島の緊張緩和の結果、新しい緊張関係が生まれたのでは、本当の意味でのアジアの平和と安定にはつながらない。実質的な関係強化をめざしてもらいたい。
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