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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/11/06 朝日新聞朝刊
(社説)胸突き八丁の中国人口政策
 
 中国の台湾などを除く大陸部人口が11億3368万人と発表された。今年7月に行った第4回国勢調査の速報値である。
 前回1982年の調査から、年平均で東京都人口を上回る1570万人ずつ増えた計算になる。出生率低下が著しい日本は、昨年の増加数が125万人だから、国の規模が違うとはいえ、中国の人口増加の大きさを改めて印象づけられる数字といえよう。
 中国では70年代末から、「1夫婦に子供は1人」をスローガンに、12億人を今世紀末の当面の目標値に人口抑制策を進めてきた。1人の女性の平均出産数で見ると、農村部はまだ3に近いが、都市部では1970年に3.3だったのが、すでに1.2ないし1.3と先進国(日本は1.57)より低い水準になっている。
 発展途上国の出生力の低下は、ゆっくりした過程を経るとされる。中国のように短期間に低下したのは例のないことだ。中国の場合、一方で急速な人口老齢化の可能性もあり、その動向は今後とも注目されよう。
 地球総人口は現在53億人とされるが、中国はその21%強を占めていることになる。この膨大な人口を養う耕地面積は世界の7%にすぎず、しかも年々減り続けている。
 1949年の建国以来、人口は倍以上になったが、1人当たりの耕地面積は逆に半減し、世界の平均の4分の1の水準に落ち込んでいる。1人当たりの食糧生産量も年々減少している。ここに中国の抱える人口問題の深刻さがあるといえよう。
 中国が近年、いわゆる「一人っ子政策」を、「ほかに選択の余地のない基本的国策」と位置づけて、計画出産奨励などの施策を進めてきた理由も、まさにそこにあった。人口圧力は近代化の大きな足かせなのだ。
 この「一人っ子政策」を主管する女性大臣、彭珮雲・国家計画生育委員会主任が最近来日し、財団法人家族計画国際協力財団(ジョイセフ)主催の国際フォーラムで講演した。彭女史は90年代が中国のベビーブームに当たっていると指摘。「今後の人口情勢はまだ非常に厳しい」と述べた。
 60年代初めの自然災害後と、人口増が盲目的に追求された文化大革命期に出生した世代が、いま出産期に突入しているためだ。過去のつけが回ってきたといえる。
 彭女史はまた、国勢調査にはなお1500万人程度の調査漏れがあると発言し、注目された。改革、開放政策の進展で捕そくしにくい流動人口が誕生した。それに伴って計画出産の枠外で生まれる子供、いわゆる「黒孩子(ヘイハイズ)」が増加していることなどを理由に挙げた。
 このヤミの出生児は戸籍に登録されないため、義務教育の機会を失うなど、結果的に新たな文盲を生み出す一因になっている。こうした不幸な子供が増えるのは、計画外出産の罰金である「社会扶養費」の負担を、親たちが逃れようとするためだとされる。
 危険な時期での妊娠中絶問題とともに、「一人っ子政策」のひずみといえよう。極端な例ではあろうが、男手のほしい農村部で、女児の虐待現象があるとも伝えられる。
 出生力を根本的に低下させるには、経済の発展を基礎に、教育、母子保健、社会保障のレベルなどの向上がぜひとも必要であろう。彭女史は、この点で先進的な経験を持つ、わが国の一層の協力を要請した。
 中国の人口政策は、わが国としても巨大な隣国の安定度を測る上できわめて重要な問題のひとつである。可能な協力を惜しまず提供する、という姿勢でのぞみたい。
 
 
 
 
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