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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/08/16 朝日新聞朝刊
(社説)中国が見せたソフト外交
 
 ベトナムとの対話の道を開くなど米国の対インドシナ政策が大幅に転換されて以後、カンボジア情勢にも新たな情勢が生じている。そうした中で行われた中国の李鵬首相の東南アジア歴訪には、これまでにないソフトな外交姿勢が見られたことを注目したい。
 その柔軟さは、2つの点に象徴的に現れていたように思う。台湾問題、それにカンボジア問題の包括的解決へ向けての態度である。
 最初の訪問国であったインドネシアでは、23年ぶりに外交関係の正常化が正式に宣言された。これを受けた形で、シンガポールのリー・クアンユー首相も李鵬首相に対し、中国との国交樹立を2、3カ月以内にも行いたいと表明した。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の中核である両国は、台湾と経済分野を中心に緊密な関係を維持し、とりわけシンガポールは軍隊の訓練を台湾で行ってきたほどだ。
 そうした意味から中国にとって、この両国との国交の確立は、台湾と競い合ってきた外交戦での大きな得点といえよう。しかし、その成果をことさら宣伝することなく、逆に抑制した対応を見せた。
 李鵬首相はシンガポールでの記者会見で、同国軍の台湾での訓練を黙認するとも受けとれる姿勢を示した。さらに「経済の発展段階の差があって、こちらにないものが台湾にある」などと語り、民間レベルという形をとれば今後とも台湾との交流に口を差しはさまないことを確認した。こうした冷静な対応は、われわれとしても歓迎したい。
 カンボジア問題では、反越3派勢力で最強の武装力を持ち、現在、雨期攻勢を仕掛けているポル・ポト派を後押ししてきた中国の動向が、ますます重要になっている。最後の訪問国のタイも加えて3カ国首脳は、国連の仲介による政治解決をポル・ポト派に受け入れさせるよう中国側に求めた。
 この点で注目されたのは、李鵬首相がインドネシアのスハルト大統領に対し、条件付きではあるが、ポル・ポト派に対する軍事援助を停止する意志を明らかにしたことだ。
 関係各国がカンボジア各派への援助をやめれば自分もやめる、との姿勢だ。これだけでは従来の立場と変化はないように思えるが、李鵬首相は同時に、ASEANの主張に沿うシアヌーク殿下を首班とする最高国民評議会の設置促進などを強調。国連安保理事会の決議を尊重し、その枠組みの中で行動し、自分勝手には動かぬとの態度を示した。
 アジアでは、もともとソ連より中国の方が脅威を感じさせる存在だったが、こうした協調的な姿勢で臨もうとしていること自体は、地域の安定化、そして平和の実現にとって望ましいことと評価しておきたい。
 ただなぜいま中国に、こうしたASEANに対する穏やかな姿勢、国連重視の「協調外交」が浮上してきたのかは、つぎのような面からも見ておく必要があるように思う。
 昨年春の天安門事件以後、中国は第三世界外交を再び強化し、最近はアジア諸国との関係を重視している。西側先進国との関係打開にまだ困難がある中で、事件に対し比較的穏やかな反応を見せた近隣との改善に活路を見いだそうとの戦略だろう。
 李鵬首相が今回のASEAN歴訪の旅で見せた「微笑」には、まず、天安門事件によって受けた外交上の失地回復の狙いがあったと見ていい。同時に李鵬氏個人にとっては、学生弾圧の直接の責任者というイメージを少しでも修復し、自らの政治基盤を強化しようという、国内政局をにらんだ思惑もあったのではないだろうか。
 
 
 
 
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