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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/06/05 朝日新聞朝刊
「安定」程遠い中国 政権揺さぶる不況 天安門1周年は乗り切ったが
 
 【北京4日=横堀特派員】天安門事件から丸1年の4日、厳戒下の北京は、未明に北京大学で学生たちの精いっぱいの抵抗はあったものの、全体的には混乱なく過ぎた。軍事力で大衆運動を押しつぶすという強硬手段を取った中国の現政権は、これで一応大きな峠を1つ越えたことになる。しかし、これが今後の中国の政局の安定を意味するのだろうか。経済的苦境がジワジワと政権の基礎に打撃を与えつつあるように見える。学生運動の弾圧では統一歩調を取った現指導部も、経済の立て直しをめぐっては必ずしも一枚岩ではない。「6・4」後の中国の政治は、経済路線をめぐって指導部内の意見の違いが拡大していく可能性が十分あると見てよいだろう。
 4日付の党機関紙「人民日報」は、社説で「現在の我が国は、政治は安定し、経済は安定し、社会は安定している」と、「安定」を強調した。たしかに表面上、中国は落ち着いている。しかし、政治の安定は、強権によるものであり、経済の安定は通貨の発行量を抑制した結果であり、社会の安定はもっぱら治安警察力の強化によっているといっても、大きな誤りではないだろう。
 中でも経済の安定は、単にインフレ率が低下したという見せかけの安定に過ぎないという見方が西側筋では有力だ。
 国家経済体制改革委員会によると、20カ月続けてきた緊縮政策の結果、一時期、前年比で20%を超していたインフレはこの4月には4%台に下がり、年平均では10%程度におさまるとの見通しだ。雨後の筍(たけのこ)のようにできた「公司」も4分の1が整理された。
 これを受けて最近、政府指導部内で、中国経済に対する一定のコンセンサスができたという。それは「整理・整頓(せいとん)はまだ終わっていないが、一段落し、大いに改革を考える」というものである。
 だがその半面で、資金不足、在庫の山、生産停止という事態が起こっている。89年の国民総生産(GNP)の伸びは3.8%。年率10%で来たこの10年で最低であり、6%だった毛沢東時代をも下回る。だからそろそろ「改革」を考えて、経済に刺激を与えなくてはならないというわけだ。
 しかし、それではどうするのかとなると、2つの対立する意見があるようだ。
 1つは通貨の発行量を増やし、購買力を大きくし、企業に「起動資金」を出す――それによって経済を活性化しようという考えだ。もう1つは、この程度の不況は予想の範囲内だとし、この際、不良企業は破産させ、国家財政の赤字の約半分を占める企業補助金をなくし、積年の弊である不合理な価格体系にメスを入れるべきだという考えである。
 中央の経済理論家の間では、後者の意見が強いという。だが、中央、地方の国営企業をバックにしている人々の間では、これ以上失業者を増やすことに強い抵抗がある。中国では失業といわず、「待業」と呼ぶが、その実体に変わりはない。経済専門家によると、従来の「待業者」は400万人、それにこのところの経済不振で新たに700万人のレイオフが出たという。
 そのほかにも、農村から都市に出稼ぎに出てきた建設労働者が帰されたり、農村の「郷鎮企業」が閉鎖になったりで、失業問題は社会不安の原因になりつつある。
 だが、「労働者が国の主人公」という建前が、改革のネックになっている。昨年末には福建省で、労働者を大量に解雇しようとした企業で騒ぎが起こり、労働者が工場の屋上から飛び降り自殺したため、政府側がいったんは打ち切ろうとした補助金を再び企業側に出さなければならなくなった、という。そのほかにも、各地でレイオフに反対する労働者の騒ぎがあった、といううわさ話が伝えられてきている。
 再び景気刺激策をとろうとすれば、インフレがまた爆発する恐れがある。かといって、思い切った「改革」を断行すれば、失業など社会不安を増大させる――中国の指導部の苦悩はこの辺りにある。
 その上、計画経済と市場メカニズムをどう調和させるかをめぐって、指導部内に根強い対立がある。それにさまざまな人脈、派閥が複雑に絡み合って来る。その結果出てくる政策は、漸進的な玉虫色のものとならざるを得ない。
 「6・4」をなんとか乗り切ったとはいえ、経済の面で中国の指導部はむしろこれから試練の時を迎える。
 
 
 
 
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