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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/06/04 朝日新聞朝刊
(社説)開かれた中国へ早く復帰を
 
 今年は、中国が半植民地時代に入るきっかけとなったアヘン戦争の勃発(ぼっぱつ)から150周年である。この機をとらえ、いま中国では愛国主義教育が展開されている。
 いわく、社会主義体制の選択には必然性があった。中国共産党なくして新中国なし・・・。こうした政治思想教育が、いま青少年に対して再び徹底して行われている背景には、6月4日で1周年を迎えた天安門事件があることはいうまでもない。
 民主化を求める武器を持たぬ学生・市民を人民解放軍が武力弾圧し、多数の犠牲者が出たことは誠に不幸な出来事だった。あの事件によってだれも利益が得られなかったという点で、悲しみはいよいよ深いといえよう。
○下降した対中親近感
 中国の国際社会におけるイメージは大きく傷つけられた。4月に総理府が発表した外交世論調査によると、日本国民の中国に対する親近感は、過去12年間で最低になっている。「一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する」(72年、日中共同声明)両国にとって、残念なことだ。
 文化大革命の後遺症から抜け出し、「暗く閉ざされた中国」という芳しくないイメージを「明るく開かれた中国」に変えたのは、「改革と開放」の新しい路線をひっさげて政治の表舞台に復活した小平氏の指導力に負うところが大きかったのは確かだ。
 われわれは、国際社会の一員としてやっていこうとする意欲にあふれた開放時代の中国を歓迎した。しかし、そうした親近感が、中国が急務とする近代化建設に協力できる日本を含めた西側諸国から大きく後退してしまったのも、あの事件以来である。西側諸国の制裁措置は、単に経済実利の面だけでなく、外交の場でも中国を手詰まりの状態に追いやっている。
 改革、開放政策は、確かに成果をあげてきた。国民総生産は10年で3倍増を達成し、民衆の生活水準も引き上げられた。買い物かごに盛られる新鮮な野菜と肉の量は、都市部で見る限りソ連や東欧に比べて豊かだ。その一方で、多くの社会経済的なひずみも生じた。インフレ、所得格差の拡大、党・政府幹部の腐敗などの問題が、天安門事件に至る政治民主化の要求の背景にあった。
 この1年、中国当局の一貫した姿勢は事件を「反革命暴乱」だとし、「人権問題」ととらえて民主化の実行を迫る西側の圧力には屈しない、というものだった。「長い歴史と戦いを通じて選んだ社会主義体制であり、内政干渉は許さない」(江沢民党総書記)と言い切っている。
○思いやりの言葉こそ
 内には一党独裁の政治体制を守り抜くために、改革、開放政策とは似つかわしくない思想・言論の統制を続けている。しかし、ソ連、東欧世界を席巻する政治民主化の国際潮流の外に、ひとり中国がとどまり続けるのは難しいだろう。ソ連と韓国は、それぞれの国益と「朝鮮半島の安定と平和」をめざして首脳会談開催に踏み切った。天安門事件の影響でテンポはやや鈍ったが、中国も韓国との経済関係を拡大している。この地域の緊張緩和に責任を持つ大国として、中国も積極的姿勢をとることを各国は期待している。
 中国には独自の歴史と国情があり、民主化への歩みも漸進的にならざるを得ない事情も、ある程度理解できる。急ぎすぎれば、摩擦や矛盾が激化する側面も確かにあろう。
 われわれは、再び中国が寒々とした、孤立した国に戻ってしまうことを望んではいない。むしろできるだけ早く、国際協調の場に復帰することを願っている。そのためには、まず中国が、西側の要望や忠告をおしなべて「干渉」とみなし、はねつけるのみの態度を修正し、近代化に協力しやすい環境をつくり出すよう、自ら努力してもらいたい。
 天安門事件1周年を迎えたいま、国家指導者の口から、犠牲者すべてを思いやる言葉を聞くことはできないものだろうか。
 
 
 
 
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