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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/04/16 朝日新聞朝刊
(社説)日中新時代のために
 
 来日中の中国の李鵬首相は記者会見で、天皇陛下との会見の内容を明らかにした。同首相によると、天皇は「(両国の間に)近代において不幸な歴史があったことに遺憾の意を表します」と述べられたという。また李首相が中国に招待したのに対し、政府との相談を前提としつつ、率直に訪中の希望を表明されたという。
 過去の戦争についての「遺憾の意」の表明は、恒久の平和への念願をうたった憲法の精神に沿うものであり、同時に大多数の国民の気持ちにもかなう自然な気持ちの表れであったと思う。
 11年前、中国の小平副首相(当時)にお会いになった昭和天皇は「両国の長い歴史の間には、一時、不幸なできごともあった」と述べられた。昭和から平成へと時代は変わったが、昭和の歴史について反省すべき点をきちんと押さえておくという姿勢を、われわれは忘れてはなるまい。
 天皇の中国訪問が実現すれば、その意義はきわめて大きいと思う。戦後初めて天皇がアジアを訪れることになるからである。
 昭和天皇は戦後、欧州と米国を訪問され、戦争に1つの区切りをつけられた。しかし、あの戦争とそれに至る歴史の中で、一方的に侵略され、支配されたアジアの国々を訪問される状況は、醸成されなかった。
 入江侍従長日記によると、昭和天皇は当時の中曽根首相に、中国訪問の希望をもらしておられたともいう。しかしやはり周囲に慎重論が強かったのだろう。
 アジアの国々には、日本軍に肉親を殺され、家を焼かれた人々がたくさんいる。国と国との関係が正常化しても、日本軍の頂点にあった「白馬にまたがった大元帥陛下」のイメージは、根強く残ってきた。
 新天皇のアジアへの旅は、こうしたアジアの人々の気持ちに十分配慮し、アジア諸国と日本との新しい関係を築きあげるのに役立つものであってほしい。
 中国国内には、日中友好の建前には反対しないが、心の中から日本に対する嫌悪感と恐怖心をぬぐい切れずにいる人も多い。あまりに親日的な言動をすることは、政治的に危険な場合もあるともらす知日派もいる。そうした状況を踏まえて李首相が天皇を招待した決断を評価したい。
 李首相の穏やかでまじめな人柄は、接触した各方面によい印象を残した。指導者としての自信もうかがえる。折しも、総書記時代に来日し、日本でも親しまれていた胡耀邦氏が亡くなった。日中関係の発展にとってまことに残念だ。李首相も、日本に対する理解の深い指導者になってほしい。
 1つ、気になることがある。天皇の「お言葉」についての宮内庁や外務省の公表の方法をめぐってである。
 会見での「お言葉」については、具体的には公表しないという慣行があり、今回も天皇と李首相の会見直後に行われた宮内庁の説明はきわめて抽象的で、「遺憾の意」の表現も明らかにされなかった。もとより天皇のご発言が政治的に利用されてはならない。しかしこの問題については国民的な関心も高く、しかもデリケートであるだけに、宮内庁はもう少し踏み込んで説明すべきではなかったか。
 結局、「お言葉」は李首相の口から中国語で語られ、それを通訳が日本語に訳した。言葉のニュアンスに違いがなかったかどうか。
 外国人記者の間では、日本政府は国内向けと外国向けとを使いわけているのではないか、と疑念をもらすむきもある。そういう誤解を生むことは賢明ではない。
 
 
 
 
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