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私はこう考える【中国について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/03/23 朝日新聞朝刊
(社説)「誤り」認めた中国指導部
 
 昨年秋以来の厳しい引き締め政策にもかかわらず、中国のインフレは収まらない。賃金が物価の上昇に追いつけず、都市住民の生活水準は低下している。インフレに伴って汚職、不正がはびこり、ごろつき、売春、人身売買など、社会主義中国になって根絶されたといわれた社会悪まで現れた。
 日本の国会に当たる中国の全国人民代表大会が開かれ、李鵬首相はこうした中国の現状を率直に認める政府活動報告を行った。
 これまで中国のこの種の大会は、成果ばかりを強調し、バラ色の夢を描いて見せるのが常だった。その意味で李鵬報告の現実直視の姿勢は評価できる。
 インフレの根本原因は、総需要が総供給を上回っている点にある。78年末以来の「開放・改革」路線で、計画経済に市場メカニズムが導入され、経済は高度成長を続けてきた。だが、投資の拡大は経済の過熱を招き、人々の欲望は刺激されて、物不足となった。「これと同時に、われわれの指導にも欠点と誤りがあった」と李鵬首相は認めた。これはかなり異例のことである。
 社会主義国ではよくあることだが、「誤り」の責任追及が、権力闘争に発展することも多い。「誤り」を認めると失脚するおそれがある。だから指導者は「誤り」をなかなか認めない。
 今度の大会前には、指導の「誤り」から、趙紫陽党総書記の責任が追及されるのではないか、との観測が流れていた。高成長を目ざす「沿海発展戦略」を打ち出し、価格改革を進めた趙総書記の路線が、今の混乱を生んだという批判が広がり、李首相と趙総書記の確執も伝えられた。
 だが李首相は「われわれ」という表現で、「誤り」の責任は指導部全体にあるとし、直接的な趙路線批判はひとまず回避された。とはいえ、指導部内の考え方の違いは依然根強く残っていると見られ、今後も折に触れ、対立が表面化することも考えられる。
 李首相はインフレ対策として、固定資産投資の圧縮、消費と賃金の伸びの抑制、貯蓄の奨励、財政・金融の引き締めなどを掲げた。そして「政府も人民も、数年の耐乏生活を送る心構えが必要」と説いた。だが、こうした方針は、半年前の共産党中央委全体会議で打ち出されたものだ。それでも収まらなかったインフレがはたしてこれで収まるのか、疑問が残る。
 中国はこの10年間、経済でも思想の面でも「収」(引き締め)と「放」(自由化)の繰り返しだった。「新旧体制の転換期に、自立的調節、自立的規制の新メカニズムがすぐには形成できない」(李報告)ことが、猫の目のように変わる政策の原因となっている。問題は、マクロ・コントロールシステムをどう確立し、計画経済と市場メカニズムの調和をどのあたりに求めるかだろう。
 ソ連でもペレストロイカ(改革)の掛け声は大きいが、経済はなかなか活性化しない。中国では経済は活性化したが、たちまち行き過ぎた。膨大な人口を抱える社会主義大国が、前例のない実験を始めたわけだから、ある程度の試行錯誤は避けられないのかもしれない。
 しかし、政策のぶれがあまりに大きいと、国際的にも影響が出る。「開放政策は堅持する」と中国当局は言っているが、今度の引き締めが開放政策にも間接的に影響が出ないか、心配だ。
 中国が順調に経済発展を続けることを望む隣人の立場から、中国の政策がより現実的で安定したものになることを期待したい。
 
 
 
 
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